第28話 どうなるスピアーズ!?
私、森崎由亜はこの日、火花さん達スピアーズのメンバー達が野外で行うライブを観に行く為に、県境近くの山の上にある大型ショッピングモールに来ていた。
この場所までは、スピアーズのメンバー達と一緒にマネージャーの菫さんが運転する車で来た。
「この県の県境って、こんな感じになっているのね。まるでヨーロッパのお城の様な駅があるね」
『ここのニュータウンは、すぐ近くに大型ショッピングモールや大学があるだけでなく、空港や大都市にも電車でアクセスがしやすい場所なのですよ』
「なるほど、このニュータウンって、そんな場所なんだね」
スピアーズの野外ライブが始まるまでの間、私はドローン状態のリーフィと一緒にニュータウンの住宅街エリアにある、古代エジプトや古代ギリシアの建築物を模したオブジェがある凄くオシャレな公園を散歩していた。
「全く…… どうして私まで、こんな場所まで来てスピアーズのライブを観ないといけないんだよ」
「ホント、ごめんね雨沼さん。リーフィと火花さんが強引にさそちゃって」
今回、私とリーフィだけでなく、意外な事につい先日知り合ったばかりの雨沼さんも同行をしていた。
どうして雨沼さんが一緒にいるのかは、私達がスピアーズのライブが行われる大型ショッピングモールに行く前に、釣りに行こうとしていた雨沼さんの姿を偶然に見かけたリーフィが雨沼さんに近づいて話しかけた後、その様子に気がついた火花さんと氷山さんに半ば強引に誘われ、私達と一緒にこの県境近くの大型ショッピングモールで行われるスピアーズのライブを見に来ていたのであった。
そして、スピアーズのライブが始まるまでの間、私達はこの大型ショッピングモール近くの住宅街エリアにあるオシャレな公園内を散歩していた。
「まっ、別に私としてもスピアーズのライブはリアルで一度は見て見たいと思っていたし、これもせっかくの機会という事で、今日はスピアーズのライブを楽しみながら鑑賞させてもらうよ」
『スピアーズのライブを生で見れる機会が出来てよかったね!! ルナ』
「ホント、ごめんね……」
天沼さんは好意的に言っているけど、本当は別の予定があった中での強引な誘いだっただけに、本当に申し訳ないと思ってしまった。
その後も私とリーフィは、スピアーズのライブの順番が来るまでの間、雨沼さんと一緒に話をやりながら公園内を散歩していた。
「あっ、そう言えば、昨晩のシズクの生配信でスパチャ付きのコメントを投稿したのを観せてもらったよ」
「えっ、どうしてそれを知っているの!?」
そんな時、突然、雨沼さんが薄ら笑いを浮かばせながら、昨日のシズクの生配信の時にスパチャ付きのコメントを投稿した事を言って来た為、どうしてその事を雨沼さんが知っているのか驚きつつ疑問に思った。
「どうしてか知りたい? フォレ猫さん」
「フォレ猫? ……あっ!? まさか、私のアカウント名を知っていたのね!!」
「正解。だからこそ、私は昨晩、森崎さんがシズクにスパチャ付きのコメントを投稿した事を知っているんだよ」
雨沼さんが"フォレ猫”という、私がメタバース内で使用しているアカウント名を知っていた為、私が昨晩の生配信の時にシズクにスパチャ付きのコメントを投稿した事を雨沼さんが知っていたと気がついた。
雨沼さんと連絡先を交換したのは、シズクのライブチケットを貰った時だったから、それで雨沼さんが私のアカウント名を知っていたのだと思うけど、会ってからまだ時間も経っていないにも関わらず、雨沼さんは意外なとこに目を通しているな……
「コメント文では、知り合いに仲の良い友達4人組のアイドル系UTuberに関する事をシズクに聞いていたけど、この4人組って、まさかのスピアーズ達だったりする?」
虹川さんがスピアーズのメンバーを抜けシズクと同じ草プロに加入するかも知れない話は、まだ世間では発表されていない為に当人達の名前を出さずに遠回しでコメントを投稿してみたけど、アカウント名が知られている以上、スピアーズの事だと思われても仕方のない事よね。
にしても雨沼さん、勘が鋭い……
「違うわよ。私の地元の友達のアイドル系UTuberの事の話よ!!」
「そうなの? 私はてっきりスピアーズの事かと思っていたけど、人違いだったのね。今時、アイドル系Utuberなんてたくさんいるから、私の知らないアイドル系UTuberがいても別に不思議ではないよね」
虹川さんが草プロに行くかも知れないという話は世間ではまだ発表されていない話である為、秘密にしておかないといけないと思い、私は上手く誤魔化す事にした。
『ユア、正直にルナに言ったらどうでしょう?』
「まだ世間では公表されていない話を部外者に言うのはどうかと思うわ」
『大丈夫です。ルナなら、絶対にこの事を他の人に言ったりしませんよ』
「どこからそんな自信が出るのよ?」
『私には分かるのです。ルナにはこの件は言っても大丈夫です』
上手く誤魔化した後、近くで話を聞いていたリーフィが何を思ったのか、雨沼さんに本当の事を正直に話す様に言って来た。
どこからそんな自信が出て来るのかは知らないけど、人間とは異なる考えがAIにはあるのかな?
そう思った私は、週に他の人がいないか確認をした後、私はリーフィを信じて雨沼さんに真実を話す事にした。
雨沼さんはスピアーズのメンバー達と同じ町に住んでいる人だし、もしかしたら噂程度には既に知っている可能性だってゼロではないと思い、思い切って雨沼さんに真実を話した。
「雨沼さん!!」
「ん!? 森崎さん、どうしたの?」
「実はね……」
私は雨沼さんの方を見て思い切って話しかけると、雨沼さんは不思議そうな表情で私の方を見た。
その後、これから話す事を雨沼さんが誰にも言わないという事を約束してくれた為、私は昨晩のコメントに書いた4人組がスピアーズのメンバー達の事であったのと、虹川さんが草プロに移籍するかも知れないという話がある事を雨沼さんに伝えた。
私が言った真実を聞いた雨沼さんは、目を丸くする様に驚いた。
「なるほどね。まさか、あのスピアーズにそんな大きな話があったなんて驚きだね」
「でしょ。これをきっかけに、今までの4人がバラバラになってしまわないかが心配なのよね」
「あの4人組に関してバラバラになってしまうイメージが浮かばないけど、確かに森崎さんが心配する様に、虹川さんがスピアーズから抜けてしまうと、裏のまとめ役が不在になってしまうので、スピアーズがバラバラになってしまう可能性は確かにゼロではないかもね?」
「やっぱり、雨沼さんもそう思うのね。私もそう思ったので、思い切ってシズクに遠回しで質問コメントをしてみたけど、結局のところ、どうするのが正解なのかよく分からないのよね」
「こういう事はいくらファンがどうこう思ったって、最終的には当人達が決めてしまえばそれでおしまいだからね」
「そうだよね~」
「でも、普通のファンとは異なり現に今、森崎さんはスピアーズのメンバー達とはほぼ毎日一緒に過ごしている友達じゃない。だったら、ここは普通のファンには出来ない事をやって、現状を死守してみるという手も悪くないと思うよ」
「シズクも言っていたけど、やっぱりそれしかないのかもね」
どうするのが正解なのかよく分からずに悩んでいた時、雨沼さんも昨日のシズクと同様に、私にこの現状を死守してみる様に言って来た。
シズクと同じ事を言った為なのか、この時の雨沼さんがどことなくシズクと重なる様に見える気がしてしまった。
そんな感じで、スピアーズのライブが始まるまでの間、私は雨沼さんと一緒に公園内を散歩しながら話をしていたのであった。
その後、スピアーズのライブが始まる時間が来た為、私達はショッピングモール前にある野外ステージに向かった。
ステージに向かうと、既にたくさんの人達がいた。
そんな人達に混ざり、しばらくステージ前で待機していると、ステージ裏からスピアーズ達が出て来た。
『ユア、皆さんが出てきましたよ!!』
「そうね。頑張って~!! 皆さん」
ステージ前ではドローンを飛ばせない為、リーフィは私が持つスマホのカメラからスピアーズのライブを鑑賞する事にした。
『イェイイェイ!!』
「リーフィ、凄く盛り上がっているね」
「リーフィはスピアーズが大好きなんだよね」
スマホの中にいても、リーフィはスピアーズのライブを観るなり、両手にペンライトを持って凄く盛り上がっていた。
そんなリーフィと一緒に、私もスピアーズのライブを楽しんだ。
「あっ!?」
歌もサビに入り本格的に盛り上がろうとしていた時、ステージの上で歌っていた虹川さんが歌の歌詞を突然忘れてしまったのか、虹川さんがソロで歌うパートの部分にも関わらず、全く歌声が聞こえてこなかった。
『どうしたのでしょうか? ソラ』
「ライブ中に歌い忘れなんて」
その様子は、ライブを観ていた私だけでなく、リーフィや雨沼さん、その他の観客達も心配する様に見ていた。
幸い、歌い忘れいていた虹川さんに対し、火花さんが踊りながら目で合図を送った事で虹川さんが気づき、歌い忘れに気がついた虹川さんは、慌てて歌い始めた。
ハプニングはあったものの、なんとか無事にライブは終了するかと思っていた矢先、またしてもステージ上では異変があった。
それは、虹川さんがダンスの振り付けを盛大に間違えてしまうというものであった。
「あぁぁ……」
「盛大にやらかしちゃったね……」
これには私達だけでなく、周囲にいた人達もその間違いぶりにどよめき始めた。
そんな感じで、スピアーズのライブは虹川さんの失敗により、残念な結果に終わってしまった。
その後、ライブが終了し、私達は火花さん達と一緒にステージの近くにあるイタリアンレストランで遅れた昼食を食べる事にした。
「しっかし、今日の空、どうしたんだよ。全然空らしくなかったよ」
「ごめん。つい、考え事が多くて……」
イタリアンレストランでの食事中、火花さんに先程のステージの事について聞かれた虹川さんは、凄く申し訳なさそうな様子でミスをした理由を答えた。
「今の空は色々と考えたい事があるけど、私達は空の事を応援しているから、私達の事なんて気にせずに行ってくれたらいいよ」
「確かに1人だけで行くのは凄く不安かも知れないけど、昔みたいに東京に上京しなければならないなんて事はないから、そこまで深く考える必要はないわよ」
草プロ加入の件で凄く考え込んでいる虹川さんに対し、火花さんと菫さんが虹川さんに気を遣う様に話しかけた。
「ほらっ、スミレっちもこう言っている事だしさ、完全にお別れって事じゃないんだから、遠慮なく行ってくれたらいいんだよ。こんなチャンス、二度とないチャンスなんだからさ……」
「って、話しながら私のエビを取ろうとしないの。コレはあげないよ」
そして、火花さんは虹川さんに話しかけながら氷山さんのポップコーンシュリンプをフォークで取ろうとした為、瞬時に氷山さんはポップコーンシュリンプが入った小皿を火花さんから遠ざけた。
「そんな事よりさ、ライブ中ぐらい変な事を考えずに真剣に取り組んで欲しいね」
「みんな、ホントごめん……」
その後、水島さんから厳しい事を言われた虹川さんは、先程以上に申し訳なさそうな表情になった。
「この様子を見る限り、相当悩んでいるみたいだね」
「そうね。虹川さんはどうするつもりなんでしょうね?」
雨沼さんが言う様に、確かに虹川さんは草プロに加入するかも知れないという件に関して凄く悩んでいる様に見えた。
もしかしたら、実は虹川さんは1人で草プロに加入するよりも、今まで通り火花さん達を含むみんなと一緒に居たいと思っていたりして?
ライブを失敗してしまうくらい悩んでいる虹川さんの様子を見ていた私は、注文したサラダを食べながら密かにそう思ったのであった。
スピアーズ・ワールド Reo @renon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スピアーズ・ワールドの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます