第3話 教えて親友先生

「なぁ、美颯くん。聞きたいことがあります」

ガヤガヤとする食堂で目の前に座る赤坂の数少ないカミングアウトをした親友に声をかける。

「なんでしょう、光くん」

優雅に水を飲み干す彼を見て一言

「彼氏が出来ました」

ゴフッと水が泡を立てた音と共に親友が目を見開く。

「初耳なんすけど」

「初めて言いましたから」

なんてしょうもない雑談でこれまた本筋から逸れる。

親友の咳払いで本筋に戻る。

「で、相手は?」

乾いた喉を潤そうとまた水を口にする親友。

「東堂 幸雅」

「は?」

今度は、口の端から水が零れ落ちる。

「ちょ、お前垂れてる。学べよ!」

慌ててティッシュで口を拭くと共にまた怒鳴り出す。

「ばっかじゃねぇのか?」

大きい声は食堂にかなり響き視線がこちらに寄る

「声でかいって」

「あ、悪い。でも、光悪ぃ事は言わねぇ今すぐ振れ」

「なんで、初カレだぞ?祝福しろよ」

笑顔で言うと親友から『ご愁傷さま』と返ってくる。

「え、なんでなん?」

はてなマークを頭にうかべる赤坂にため息をしつつ説明してくれた。


どうやら、東堂はこの大学一のクズらしい。入学時から沢山の女を食っては捨ての繰り返し。それでも、顔が良いせいか女は絶えず告られては付き合うも浮気三昧で学ばない男だそうだ。


それを聞いても赤坂のはてなマークは消えなかった。

「そんなの噂だろ?」

真顔で言われてしまい親友はがクリと肩を落とす。

「お前ら、お似合いだよ。もう、うん」

「でもよー、幸雅さん昼食の時俺の飯奪ったりしてくんの、それに俺と歩く時は必ず首根っこを掴むの...嫌われてんのかな?普通の恋人もそうなのか?」

「違ぇよ、普通の恋人はそんなことしねぇよ。大切に接する。お前の付き合ってるタイプは俗に言う『クズ』って奴だ」

また、苦い顔をして親友は一言

「無理と感じたらすぐに別れろ。そういうタイプは、続くと心がやられるぞ」

「親友が自殺とか嫌だから俺は、忠告したぞ」そう言って立ち去っていく。


―自殺?恋人が出来て嬉しいのに?

なんて思っていた翌日思い切って恋人に聞いてみる。

「幸雅さんって、女を食っては捨てを繰り返しているんですか?」

真顔で聞いても「別に」としか返ってこない。

別にって、否定なのか?肯定なのか?なんて考え「お金、いつかえしてくれますか?」

と聞いても「いつか、じゃ俺行くわ」とか綺麗に躱され逃げていく。


―お前の付き合ってるタイプは俗に言う

『クズ』って奴だ


親友の声が頭に浮かぶ。

「クズ、ねぇ。愛情あげたら返して貰えるんだろうか...」

なんて考えつつも今日も恋人関係がズルズルと続いてく。

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クズ彼に惚れる僕はやっぱりおかしい ライ麦 @KOSINOKAGE

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