それでも世界を壊すか

 小さな公園。昔、彼女と一緒に遊んでいた公園。

「懐かしいな……」

 思わず声が漏れた。その時、彼女の声が聞こえたのだ。

「懐かしいね。」

 白髪で美しい碧眼の少女。

「お待たせ、恵吏ちゃん。あの時の約束、覚えてる?」

 そう、私はずっと待っていた。日が暮れるまで待っていた。だが、灯は来なかったのだ。あの時の遊ぶ約束は守られなかった。この世界は残酷だった。

「覚えてる。」

 忘れるわけがない。

「だったら、もうやめようよ。私はここにいる。もう居なくならない。私はずっと恵吏ちゃんと一緒だよ。」

 意味が分からない。

「言ったじゃん、やろうって。ここに救いなんかない!このままじゃ誰も救われない!」

「救われるの。あの子は。」

 あの子って……

「神の能力のこと?」

「あの子はずっと世界の一番奥に一人だったの。一人きりで、ずっとこの世界のために力を供給してたの。それなのに、この世界を終わらせたいからって消されちゃうの?」

「…………」

「私、会った。そして聞いた。ずっと一人だったこと。何も覚えてないまま何もない場所に放り出されてから今までのこと。私もそのうちそうなるんだって思ったら……そんなことできないよ。」

「でも……」

「…………」

「……ごめん」

 世界を変えたいだとか、この世界が嫌だとかいうのは、完全に私の主観的なものだ。それ以上に私を補強してくれる材料はない。私は灯に反論できない。

「私はこの宇宙を破壊する。そしたら、もう世界を終わらせる存在は出現しなくなる。全部終わらせるの。」

「でも、そんなことしたら……」

「物理次元を構成するものは全てが消える。そしたら、あの子は力を引き出される機械にならなくて済む。……それでいいの。」

 そんなのない。一人のために人類が絶滅だなんて。

 反論しようとした。しかし、私が今までやってきたことを思い出した。自分一人の価値観で世界を終わらせるだとか、世界を変えるだとか。それは自分以外の全てを無視した我儘なものだ。私一人の我儘のために、実際に何人も死んだ。私に灯に反論する権利があるんだろうか。

「……でも……」

「そんなこと許されるわけがない。」

 銃声と同時に聞こえた声がそう言った。

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