終わりの日
統一暦500年4月1日の朝である。天気は快晴、目覚めは快適。いい朝だ。
右腕は軽く筋肉痛だ。昨日は流石にやりすぎた。でも、そのおかげで何か吹っ切ることができた気がする。
灯を探しに行こう。私はこの理不尽な世界を終わらせる。
SNSはどこもサーバーがダウンしていた。検索エンジンもいくら待っても応答しない。自分の足と勘でどうにかするしかないみたいだ。
まさに世界の終末という感じか。道は至る所で渋滞していて、色々な場所で喧嘩しているみたいだ。それらから聞き取れたものを繋ぎ合わせると、「ネットワークが落ちた」「ACARIが暴走している」「ネットワークの電波が弱いところに逃げたら死ななくて済むかもしれない」となった。
一つ目に関しては既に知っていたことだ。二つ目は初耳だし興味深いものだが、多分そこらへんで話している人に聞いたところでそれ以上の有益な情報を得られるものではないだろう。三つ目。逃げないと死ぬというのは前提なのか。それに、地球上どこに行ったとしても全ての人間と多くのコンピュータはネットワークに接続されている。地球から離れるくらいしないとネットワークからは逃れられないため、多分死ぬという前提が合っているのなら私たちは地球上どこに逃げても死ぬ。
ネットワークが落ちたせいで正確な情報が得られないんだろう。情報源が不明で信憑性の低い情報が口コミで広がっているみたいだ。
私が東京から出て行こうとする人々の流れに逆らってやってきたのは、古びた小さな公園。幼い頃、私と灯が一緒に遊んでいた公園だ。そして、灯が居なくなった日、最後に遊ぶ約束をした場所である。
周囲を見渡してみたが、人は一人もいなかった。
この一帯は数年前に再開発するだとかで周囲の土地の買収が進んでいる途中だった。この辺りに住んでいた人はほぼ全員引っ越しているはずだ。
誰も掃除していないため汚れているベンチの、まだ綺麗なほうな場所を選んで腰を下ろす。
公園の遊具を見ていると、あの頃のことを思い出す。公園の中央にある街灯の周りを走り回って鬼ごっこをした。ブランコに二人で乗った。よく分からないオブジェクトの中でしたごっこ遊び。
「懐かしいな……。」
つい、声が漏れてしまった。
「懐かしいね。」
声が聞こえた方を振り返る。白髪で碧眼の少女。あの頃からだいぶ大きくなったが、あの頃に一目見て幼心に感じた美しい佇まいは変わっていない。
「灯……?」
「お待たせ、恵吏ちゃん。あの時の約束、覚えてる?」
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