また独り

 また、一人になった。

 一番最初と同じ。安い賃貸の一室。なんの愛着もない私の部屋。

 紅音も死んでしまった。その事実をいくら反芻してみても、涙の一滴も流れてくれない。死体は放置したままだが、そろそろ腐り始めるころだろうか。

 初めて性的興奮を覚えた(覚えてしまった)同性の胸元を思い出す。やはり私の性癖は歪んでいる。大事な友達に性的な感情を抱いてしまうどころか、その死体を見てそういう欲望を持ってしまった。

 ……。一回だけ。そう、一回だけ。


 体液で濡れた指先を眺めながら呟く。

「死にたい」

 最低だ。大事な友達でシてしまった。それも、その死体で。


 ダメだ。冷静になってきてしまった。思考が凝り固まって、どんどん悪い方向に向かっていく。

 そして思い出してしまう。

「無理ってなんだよ」

 あれだけ「やろう」って言ってたのに。どういう心境変化だよ。勝手に無理って言って、紅音を殺して。

「……疲れた。」

 右腕が痺れて動かなくなるまでオナニーした。そして寝た。

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