脈絡なんてない

 早乙女在理沙と祇園寺霊那が死んだ。

 目の前で霊那がショッキングな見た目の死体になったのを見てしまった紅音は部屋の隅でずっと嘔吐している。過呼吸だし、たまに壁に頭を打ち付けている。

 私はそんな紅音に対して何をするのが正解なのか知らない。壊れてしまった紅音を前に、私は何もできない。

 私は死体に慣れてしまった。頭部が吹き飛んだ死体なんて今まで幾つも見てきた。たくさんの人が死ぬのを見てきた。本当は紅音みたいな反応をするべきなんだ。私は異常だ。……いや、異常なのはこの世界なんだ。私は悪くない、全部この世界が悪い。私をこんな状況にした私以外の全てが悪い。


 灯が目を開いた。神の能力か、灯なのか。

 どうやら後者らしい。彼女の第一声はこうだった。

「私、もう無理だよ。」

 その直後、彼女はどこかに消えた。部屋の壁に巨大な穴を残して。

 その時に飛んだ破片に押しつぶされて紅音は死んだ。私は、また死ねなかった。

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