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恵吏と灯のルキフェルたちの目から逃れるような生活はまだ続いていた。聡兎が用意してくれたとある施設の地下の部屋での二人きりの生活である。
日本は既に深夜だった。恵吏は熟睡していた。
灯も恵吏の隣で寝ていたのだが、彼女はあることに気づき目を覚ます。かなり緊迫している様子である。
「恵吏ちゃん……起きて!早く!」
しばらく灯に揺すられていた恵吏はようやく目を覚ます。
「あれ……?もう朝?」
「誰かがここに近づいてる!」
「えっと……紅音や聡兎さんじゃなくて?」
「多分……ルキフェルさんの手下だと思う。」
恵吏は灯の手を引っ張って走り出した。
薄暗い電灯が10メートル程度おきに付いている長い廊下。灯の手を引っ張っている恵吏は走りながら電話を掛ける。その相手は紅音。
「……出ない。」
当然だ。今は夜の3時。しかも平日である。いくら生活習慣が悪い紅音でも朝から授業があれば寝る時間である。
今度は聡兎である。
「お願い……!」
呼び出し音が二度、三度、四度……
恵吏にとっては無限にも長く感じられた。
『……もしもし?』
聡兎の声だった。彼はこんな時間にも関わらず起きていた。
「ルキフェルに見つかった!奴らはもうこの建物の中まで入ってるらしい!」
『マジか!分かった、どうにかしてみる。俺が間に合うか分からんが、できるだけ耐えてくれ!』
恵吏から連絡を受けた聡兎がすぐに電話したのは
『何?こんな変な時間に……。寝ようとしてたとこなのに。』
「灯たちがルキフェルに見つかった。今すぐどうにかできないか?時間稼ぎだけでいい!」
『ええ……。ちゃんとボーナスくれるんですか?』
「いくらでも出す!」
『……了解。』
仕事がひと段落ついてようやく寝られる、と思っていた在理沙は不機嫌そうな顔のままでその足を進める先を霊那が寝ているベッドからパソコンの方に変えた。
キーボードの前の椅子に腰かけた在理沙は早速作業を始める。まず、ルキフェルの手下と思われるものを炙り出す。これは前にもやった。前回と手口が変わっていないことが僥倖し、ほんの数分でその人影を特定できた。彼らは既に灯たちの隠れている施設の奥まで潜入しており、彼女たちとは数百メートルというところだ。
「時間稼ぎ、ねぇ。」
在理沙は施設のセキュリティシステムに入る。そこからシャッターを操作するシステムに入り、シャッターを閉めてルキフェルの部隊の行動を封じる。AIに計算させて算出した、部隊と灯たちの距離と外に脱出できるまでの時間が短いという両方を満たすルートに従って適切なシャッターを閉めた。
廊下を走っていた恵吏は廊下の奥でシャッターが閉まる音を聞いた。それと同時に恵吏の携帯端末に連絡が入る。在理沙からであった。
それに添付されていたのは恵吏の現在地とルートが示された施設の三次元見取り図。これに従え、ということだろう。
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