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シベリア中央部、荒原のど真ん中にある地下鉄の入口のような建造物。その前にミカエルとガブリエルは立っていた。
ガブリエルはようやくウリエルとラファエルの居場所を突き止めた。なかなか見つからなかったのも無理はない。二人が捕らえられていたのはルキフェリウス・ウェストファリス・メルトリリスの研究施設だった。外部に一切の情報が漏れない機密施設である。しかし、情報が一切漏れないというのは施設の内部に入ってからのことだ。つまり、施設に運び込まれるまでの間の情報を掴めば少なくともそこに居るということは分かる。
ミカエルは炎剣を構えなおす。
「終わらせるぞ。今すぐ、だ。」
ガブリエルはそんなミカエルを見て微笑む。
「ええ、終わらせに行きましょう。」
潜入、とは銘打っているものの、実際は「殴りこみ」とかのほうが近いかもしれない。ミカエルはその絶対的な火力で全てを焼き払いながら強引に奥に進んでいく。ガブリエルはミカエルが撃ち漏らしたものを片っ端から処理していく。人工天使としての圧倒的な力に任せて押し通していく。
「この部屋でもないみたいね。」
「よし、次だ。」
そんな様子をカメラ越しに見ていたルキフェルは不審な笑みを浮かべていた。
「飛んで火にいる夏の虫、とか?所詮は私に作られた駒に過ぎないことを理解してもらいたいですねえ。」
「……なあ、ガブリエル。」
「なぁに?」
「私たち、誘導されてないか?」
「今更気づいたの?ルキフェルを甘く見すぎよ。というか、誘導されてるのに気づいたところで退く気はないんでしょ?」
「まあ、そうだけど……。」
そんなことを言っている間に、二人は一番奥の部屋まで着いてしまった。
広い空間だった。大深度地下の空間で、やたらと天井が高い。そして、無駄に横に長い。
その部屋の中央部にウリエルが拘束されていた。
「ウリエル!」
ミカエルはすぐに駆け寄る。しかし、すぐにミカエルは倒れてしまった。呼吸できないのか、倒れたままヒューヒューと音を立てている。
「ミカエル?!」
ガブリエルはミカエルに駆け寄ろうとするが、それを制止した者がいた。
「待ちなさい。あなたもミカエルと同じ目に逢いたいんですか?」
金髪の男だった。
「ルキフェル……!」
ルキフェリウス・ウェストファリス・メルトリリス。人工天使たちの生みの親とも言える人間である。神を創造するという野望のため、彼は人の手で天使を作り出すことに成功した。
「安心してください、殺しはしません。私の要求を呑んでくれたらそれでいいんです。何も難しいことを要求したいわけじゃない。ただ、暴れずに私に従ってくれればそれでいいんです。」
ガブリエルはルキフェルに向けて魔術を発動させる。音速を越える速度で射出されたのは水である。レーザーのような一直線で高圧の水がルキフェルに飛んでいく。しかし、その水はミカエルが倒れたあたりに達すると急に勢いをなくして散ってしまう。倒れているミカエルの上にガブリエルの水が降りかかる。
「ほら、私には手を出せないことが理解できましたか?分かったら大人しく拘束されなさい。」
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