いない!

統一暦499年12月31日午後6時10分

「あーもう、聡兎さん強すぎ!」

 対戦パズルゲームである。紅音はこれで連敗が二桁に達した。

「ふふ、コツは落ち着いてコンボを組むことだな。」

 ちなみに、この男は始めて一週間ほどでこのゲームの世界記録保持者になった程度の実力を持っている。

 紅音はコントローラを放り投げて床に寝転ぶ。疲れた頭で天井をぼんやり見ていると、ふと恵吏の顔を思い出す。えりりんは何やってるのかな、とか思い、恵吏に電話をかけてみる。

「……繋がらない。」

「……寝てるだけじゃないのか?」

 聡兎が言うように、ただ寝ているだけと考えるのが妥当だろう。でも、紅音は無性に心配になった。理由なんてない。直感というやつである。

「アカネ、えりりんのとこ見てくる!」

 紅音はすぐに外に駆けだす。

「あっ、おい、待て紅音!」

 聡兎は慌てて紅音を追いかけ始める。


統一暦499年12月31日午後6時15分

 紅音が来た時には恵吏の部屋のドアは鍵がかかっていなかった。そして、部屋の中は空っぽだった。恵吏もアカリもいない。

 聡兎が息を切らしながら紅音を追いかけてきた。そんな聡兎に紅音は言う。

「助けなきゃ!」

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