一年
統一暦499年12月25日午前3時44分
「まだ寝てなかったのか。」
ホテルの共用スペースのストーブの前で椅子に座っていた聡兎に話しかけたのはミカエルである。
「時差のせいかあまり眠くないしな。……というか、こんな中途半端な時間まで指定してきたのはお前だろ。」
「確かにそうだったな。ちょっと話があってな。」
ミカエルが目配せすると後ろからウリエル、ガブリエル、ラファエルが出てくる。
「今からちょうど1年前、覚えてるか?」
「去年のクリスマス……?よく覚えてないが、去年のカリフォルニアは寒かったな。」
「そうだな、あの日は寒かった。」
「お前たちもカリフォルニアに居たのか?」
「奇遇……だと思うか?」
「……?」
話が読めないのもそうだが、後ろのウリエルが何かもじもじとしているのが気になる。
「私たちの初対面はいつだっけ。」
「それは……8月の末日だっけ。」
「うん、ちゃんと覚えてるな。」
「それがどうしたんだ?」
「まあ、待て。」
ミカエルは時計を見ていた。
「そろそろか。」
統一暦499年12月25日午前3時45分
「本当に1年の間よく頑張ったと思う。まさか……本当にまた会えるなんて、しかも助けられる側になるなんてあの時は思ってもみなかったな。今までよく足掻いたと思うよ。」
そして。
「……まさか。」
聡兎は、思い出す。1年前、カリフォルニアでの出来事を。
ウリエルが恥ずかしそうに聡兎を見ている。
「ウリエル……いや、ユウリちゃん……か?」
ウリエルは聡兎に抱き着いた。
「そうか、俺は1年前……。ハハ、運命ってやつなのか?」
「その……あの時はごめんなさい。」
ガブリエルが申し訳なさそうに言う。
「もういいだろ、1年前だぞ。それに可愛い女の子に虐められるのはご褒美だし。……なんだよ、その軽蔑の目は。」
ただ、その時記憶を取り戻した人間がもう一人いた。聡兎たちの様子を陰から見ていた彼女は赤坂紅音。四大天使に囲まれる聡兎を見たことが何らかの刺激になったのだろうか。思い出してしまった。そして、安心した。聡兎が記憶を取り戻したことを。そして、あの天使たちとこれだけ和やかな雰囲気で話せるまでになっていることを。
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