窮鼠

統一暦499年12月2日午前10時

「さすが『第一』。話に聞いたことはあったけどこんなに仕事が早いとは……。」

 琉吏が言う。

「『第一』?」

 恵吏は聞き返す。

「なんだっけ、正式名称は『第一特例対応課』だっけ?『機関』でも最強クラスの特殊部隊だとか。」

「遅かったな。」

 歩いてきた聡兎が言う。

「奴らは甘く見るべきじゃない。『機関』でトップクラスの人材に『機関』が開発した得体の知れない超科学とやらの技術を持たせてるんだ。あの技術はあまりにも未知数だ。嘘か真か、その技術で破壊神とやりあっただとかという記録も見たことがある。琉吏さんもその加護とかいうのが何なのか知らんが、気を抜かない方がいい。」


統一暦499年12月2日午前10時10分

「これか。」

 在理沙が呟いた。

 ちょうどスイス政府から渡されたデータの解析が終わったところだった。

「ここのデータの乱れは不明飛翔体が飛んでいたことを示していると取ることができる。そしてその軌道から予測すると……着地地点はこのあたり。そのエリアにあるのは、人口およそ200人の村のみ。」


統一暦499年12月2日午前10時30分

 インターホンが鳴る。

「来た……の?」

 琉吏がドアの向こうを確認する。特に怪しい様子のない男性。

「恐らく、『第一』のメンバーでしょうね。」

 アカリが言う。

「……まず、相手はことを荒げたくない。ご近所さんに騒ぎが勘づかれることを避けたいと思ってる。なら、相手はそう簡単に得物を使って仕留めるとかに出ることは難しいはず。……私が相手をする。その間に適当に逃げて。」

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