「皇」編

神の末裔

統一暦499年10月17日午後2時13分

 神武天皇に始まり数百代に渡りその血脈を繋げてきた皇室であったが、現代においてはほぼ全ての特権はなくなり多少裕福な程度の一般人として生活していた。

 そんな皇室の現在まで存続していた末裔がこの黒髪の青年、苑仁うつひとである。

「あっ、ウツくん久しぶりー!」

「おや、紅音あかねくんか?そして……」

 紅音の後ろから歩いてくる男を見て苑仁は顔を曇らせる。

聡兎そうと……。」


統一暦499年10月17日午後2時25分

 東京、千代田の江戸城遺跡。京都から移ったあと天皇は長くここで暮らしていた。しかし、それは既に過去の話であり現在はそこから1キロメートルほど離れた住宅地の聡兎曰く「苑仁御所」で暮らしている。

 聡兎の言うように、苑仁が祖父母、両親とともに暮らしている豪邸は苑仁の多岐にわたるビジネスの収入で建てられたものだ。

 そんな一軒家の応接間に聡兎、紅音、恵吏えりあかりは案内された。

「抗鬱薬くん、なんで俺だけ茶菓子がチューインガムなの?」

「お前は朝敵だからな、特別待遇だ。あとその呼び方やめろ。僕は抗鬱薬なんて服用してない。」

「朝敵って言葉の響きはかっこいいからいいんだけどさ、いい加減許せよ。」

「ところで何の用があるのかな?紅音くん。」

「話逸らしたな!」

 紅音は平常運転の聡兎にため息をつきつつ本題を切り出す。

「皇室って神様の血を引いてるの?」

「……?まあ、神話ではそうなっているけれど。」

「じゃあ、」

「調べさせて、とかかい?」

「え……。まあ、そうだけど……。」

「なんなんだ?最近はそういう研究が流行ってるのか?」

「どういうこと……?」

「以前、同じことを言われたんだ。ACARIの開発者の朝倉あさくらあきら氏に。」

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