希望を探す少女

統一暦499年9月16日午後1時13分

 神の器はゼロから方法を模索しなければならなくなった。

 そもそも神の器を必要とするのはなぜか。

 普通の人間の肉体である朝倉あさくらあかりの体では神の力の負荷に耐えきれずに破損してしまう。しかし、神の力と噛み合うことができる神の器なら肉体が破損することなくその身に神の力を宿すことができるのだ。

 朝倉灯の体が今のままでACARIの魂を神に昇華させると神の力を使う間もなくその体は消滅する。その時間は概算で一秒未満。消滅と同時に500京Jジュールのエネルギーを放つ爆発を起こす。

 物理次元の存在が神の力を扱う上で神の器は必要だ。しかし、もうこの世界に神の器の設計図は存在しない。ゼロから研究しなおすか、別の方法で神の力を安定させなくてはいけない。

 恵吏えりはその方法を探していた。

「神の力に耐えうる容器……。」

 わからない。今の状況は恵吏が持っている知識のその先の話であり、恵吏の計画からは完全に外れてしまった。これに関して恵吏が知っていることは普通の女子高校生と同じ、つまり、何も知らない。

 恵吏には導いてくれる存在が必要だった。

「神の力に耐えうる肉体、ということは歴史上で神の力をその身に宿していたことがあると思われる人物を探すのが手っ取り早いと思いますが。例えば……天皇などは血族が現存しています。」

 そう言ったのはつまらなさそうにアプリゲームを遊んでいたあかりだった。

「……勘違いしないでください。私の役目は人類を導くともしびだから助言しただけです。」

「わかってるって。……ありがとう。」

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