信じているから
統一暦499年8月29日午前4時19分
先ほどから聡兎は親指で器用に端末を操作しつつ振り回してガブリエルの攻撃を捌いていたが、腰に掴まっている
「聡兎さん?大丈夫?」
「……はぁ……はぁ……。なんのこれしきッ!」
聡兎は端末を振って目の前に飛んできた高速の水弾をはじく。
「いい加減に諦めて。早くその端末を捨てなさい。そしたら見逃してあげる。」
聡兎は息を切らしながら、それでも右手に端末を握りなおす。
「……あっ、そう。」
ガブリエルは不服そうに言う。
「なら、文句は言わないでね。」
ミカエルに抱き着いたまま、ミカエルは右手を高く掲げる。右手の先に直径20センチメートルほどの水弾を作り出す。
聡兎は端末をかざした。
飛んできた水弾は端末の前ではじける。しかし、今までの疲労が蓄積していたのであろう、その水で聡兎は足を滑らせてしまった。
ガブリエルはすぐに同程度の大きさの水弾を作り出し、飛ばした。
「……ッ!」
この体勢からだと、明らかに聡兎はそれに対応できない。高速の水弾が聡兎に向けてまっすぐ飛んで行った。
「聡兎さん!」
聡兎の前に飛び出したのは紅音だった。水弾は紅音の腹部に直撃した。紅音は3メートル飛んだ。
「紅音!」
聡兎はすぐに駆け寄る。
紅音は腹部を押さえて呻いている。呼吸が荒い。
聡兎はガブリエルを睨む。
ガブリエルは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに真顔に戻る。
「いい従妹を持って幸せ者ね。……これ以上その子に危害が及んでほしくないのなら、それを捨てなさい。」
聡兎は、端末をガブリエルに向かって投げた。
「ふふ、結局あなたもその子を助けたいって自分の欲の前には他社を見捨てるのね。」
「……違う。」
聡兎は小さく呟いた。
「あの子を信じてるんだ。」
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