第3話

ベッドに寝かせ離れようとすると、絡んだ手足の力が緩まない。


「おい、コラ」


ちょっと声に怒りを込めても、ぎゅうって力込められる。


「なぁ、ヤりたいんだけど」

「お、おれ」

「はいはい」

「かったら」

「はいはい」

「…すてねぇ?」

「…」

「たたかねぇ?」

「…」

「い、いじめ、なぃでくれぇ…」


ぐずっと聞こえ、俺は溜息を吐いた。

長い溜息にガキは何を思ったのか、ぐすぐす泣き始めた。

俺に回ってた手足の力が抜け、辛そうに両手で顔を覆い泣いてる。


くそがっとか、なんでだよっとか、口は動いているが声は出てない。

そんな風に、こんな様に、ひとりで耐えてたのか。

俺はまだ濡れてる頭を撫でた。


「俺は、飼った物は、捨てないし叩かない主義だ」


指の隙間から猜疑心たっぷりの眼が覗く。


「だけど、いじめはする。そりゃあもう、いじめる」

「うっうーっ」

「お前がないても絶対やめないから、大人しくしてろ」

「うぅうっっ」


俺の言葉にガキは諦めたらしい。

身体の力が抜けて、どうでもよいって感じになる。

ふくれっ面で俺を睨んでいる。

これはそうだな、立場ってもんを分からせないといけないな。


多分にやにやしてるだろう笑顔のまま、俺はガキの脇腹を撫でた。


「っ!」


くすぐったいのと驚きでガキは両目を見開き、両手で口を覆った。

そうきたか。

じゃあ、そうしててもらおうかな。


舌を出し、その表情を見ながら顔を近付ける。

何をするんだと、見ている。

だから、こうするんだよと胸を舐めた。


「っっ!」


暴力に晒されていたとは言え、獣人は丈夫だ。

怪我の回復も早い。

だからカギの肌はとても健康的で、滑らかだった。

それを確かめるように、乳首の周りをぺろぺろ舐め、脇と腰回りを撫でまわす。


「っっっ」


俺に抵抗すれば、親父の元に返される。

それがあるから、ガキは抵抗せず耐え続ける。

そんな反応を目で楽しみながら、俺は小さな乳首を舌で突いた。


びくんっと胸が跳ねた。


「お前、感じやすいな…もしかしてヤったことあんのか?」


腰を撫でていた手で尻を掴む。

張りがあって実に良い肉感だ。

俺は両手で尻を掴んでぐにぐに揉むことにした。


「!っっっっ!」


男にいいように尻を揉まれ、ガキが顔を真っ赤にしながら俺を睨む。

まったく威嚇になってないので、俺は可愛い乳首を吸うことにした。


「っぅうっ」


吸ってから、乳首の周囲を優しくキスをする。

もじもじ胸が揺れ、小さな乳首が立ってくる。

俺はその小さな粒をぺろっと舐めて、軽く噛んだ。

必死で声を殺そうとしてるが、んふぅと洩れた息がどう感じているのか教えてくれた。


「なぁ、ココ、経験済み?」

「あっやっっ」


臍の穴に舌を入れながら、尻を揉んでた指で奥に隠れた穴を突いた。

きゅうってすぼまっている。

無理矢理指をねじ込みたくなる。

俺は返事を待たず、両足を持ち上げその恥部を無理矢理外気に晒してやった。


「やっめっろっ!」

「なぁ、聞いてんじゃん、経験済みかって」


ガキは顔を真っ赤にして抵抗しようともがくが、俺は両足をぐいっと頭の方へ押した。

おいおい、両足頭の横についちゃたよ。


「身体柔らかいな…えっちだなぁ…こりゃあ、ヤりまくられたんだろうなぁ」

「やだぁっ!」

「その顔でやだやだって言われても、説得力ねぇよ」


俺はそのまま、自分のチンコを尻の穴に押し付けた。

興奮は十分。

軽く押し込む。

もちろん挿るわけがない。


「やだっあああっ!やだぁっ」

「やだ?じゃあ素直に答えろよ。ヤったこと、あんだろ?」


身体を捻って逃げようとするガキを、しっかり抑え込んで答えを促す。

ガキは涙を眼に一杯溜めて、真っ赤な顔で怒ったように口を開いた。


「っっねぇっ」

「ねぇ?なにがねぇんだよ」

「だからっ、したこと、ねぇってっ!」

「なにを、したことねぇんだよ」


さぞ俺は意地悪に見えてるんだろう。

今日一、ガキが怒る。


「だから交尾なんてしたことねぇっつってんだろぉが変態!」


言ってからハっとして怯える。

言い過ぎたと思ったらしい。

真っ赤だったのに顔を青くさせている。

こういう短絡的なとこがコイツは致命的だ。


「…変態?俺が?変態?そうだよな、出会ってすぐヤろうとする男だもんな」


わざとにこっとすると、ガキがごめんなさいって小さく言った。

こいうとこも、あれだな。


「変態に今からヤられちゃうな。虐められちゃうな」

「…いじめ、ないでぇ」


そんな顔で懇願されても。

俺は唾を飲み込んだ。


「無理だろ…お前…」


ぐすっと、また泣き始める。

忙しい奴。


「こんな可愛いとか反則だから、もうめちゃくちゃ可愛がってやるから…可愛がって、虐めるからな?鳴いてもやめねぇからな?」


そう言って俺はガキの身体を抱き上げ、ベッドの上に一緒に座り直した。

膝の上がいいか、と抱き寄せると「ふにゃ」っと呻きながらガキがぎゅうっと抱き付いてくる。

こいつ、ホントにさ。


「そーゆー、可愛いことすんなって」


どうやら俺がどういう風に虐めるか理解したガキが、安堵の表情を浮かべる。

ついでに泣き始めた。

ほっとしたらしい。

暴力的な虐めじゃないのが分かって。

それを誤魔化そうとガキが虚勢を張った。


「がわいぐねぇもんおれおどごだもんっ」


なんだそれ、と笑ってしまう。

笑いながら背中をさすり、頭も撫でる。

乾いてきた髪は、細く柔く手触りが良かった。

耳を撫でると、反射でぴしぴしって逃げられる。

生意気な犬耳だ、食んでやろ。


「あぅ…くすぐった…」

「ん?耳くすぐったい?可愛いからちょい食わせて」

「あっあっ…」


逃げようとするので捕まえて、左手で左耳弄り、薄い右耳をべしょべしょにあむあむ、この毛がまたいいな。


「みみぃ、やめろよぉ…へんになるぅっ」

「じゃあ、顔こっち向けろ」


耳はもうやだやだ、と首元に擦り寄るので、俺はその顔を要求した。

すると素直に顔が上がって、何遍も泣いた鼻が俺の鼻に触れた。

一瞬、顔の近さにガキが驚く。

俺はそのまま、顎を掴んでキスをした。

生意気なことばっかり抜かす唇は、中々に柔らかい。

くっついてる心地よさを、もっと感じていたいと思わせる。

徐々にガキの開いてた目がゆっくり閉じて、眉間のシワがとれた。

俺が眉間に素早くキスすると、そっちじゃないと口が追い掛けてくる。

ふふふと笑うと、軽く背中を叩かれた。

俺はあちこちキスをした。

その度に口が追い掛けてくる。


「可愛いことすんなって」


ゆっくり、親指で唇を撫でる。

なんでもよく食べそうな、でっかい口だ。

トロンとした顔、もの欲しそうだ。


「かあぃくなんかねぇ…」


泣いてた目が、別の意味で潤んでいる。

生意気なこと言った唇が、動かない俺を誘うように突き出される。


俺はキスする寸前まで唇寄せる。


「ところでお前、名前は?」


ガキがそんなことよりと顔を寄せて来るので、ダメダメと顎を掴んで押しとどめる。

ついでに口元にちゅうってキスすると、唇がもにもに動いた。


「ヘンリぃ…」


迷子の子犬が鳴いたような声だった。


「ヘンリィ?」


優しく呼ぶと何故か嬉しそうに頷かれる。

耳がピンとなって俺の声をしっかりキャッチする。

尻尾があったらめちゃくちゃ振られたに違いない。

親父はクソガキって呼んでたな、こりゃ。


「ヘンリィ、俺の名前はドマゴウだ」

「どまごぉー?」

「…呼ぶならゴウにしてくれ」

「ごぉ」


これは種族的な、発音の問題だろう。

間抜けな感じもするが、許す。


「ヘンリィ」

「…ごぉ…」


名前を呼ぶと名前を呼ばれた。

ごぉ、と言って開いた口に、俺はキスをした。


「んっ…ちゅぅ…」


ヘンリィが嬉々として俺の唇に吸い付いてくる。

随分気に入ったようだ。

隙間から舌を入れると、すぐさま舌が迎えにやって来た。

互いの口の中で舌を絡ませる。

俺が強く吸うと、ヘンリィも強く吸い返してくる。

唇を優しく食むと、それも真似された。

こいつめ。


「キス、好きか?」

「う…すき…」


こくこく頷かれ、素直でよろしすぎる。

深く奥まで舌をねじ込んで、好き放題かき回す。

ヘンリィがぎゅうっと俺にしがみつき、与えられる熱量にんうんう声を洩らした。

思う存分味わって唇を強く吸い離れると、ヘンリィがこくりと喉を鳴らした。

いっぱい涎出てぐちゃぐちゃにしたから当然だったが、随分美味しそうに飲むなこいつ。


「…ちゅうぅ…まだ…」


してぇ、と俺に口付けてくる。


「キス魔め」

「んっうぅ…」


俺はキスをしながら、ヘンリィの背中を優しく撫でた。

落ち着いて触れば触るほど、ほどよい筋肉質に気付かされる。

背中から脇、そして胸や腹をゆっくり、確かめるように俺が触った。

汗をかいてしっとりとした肉と肌だ。

ずっと触ってられるな。

この筋肉質だけど、子供っぽいのが残ってる身体、まじでいいわ。


「んぁ…俺も、さわるぅ」

「いいけど、変なとこ触んなよ」

「へんなとこってどこだよぅ」


ぷにぷにの締まった尻を撫でまわしていたら、キスに満足したのかヘンリィがそんなことを言い始める。

ゴツゴツした手が俺の背中を撫でる。

どう触っていいのか分からない戸惑いと、触りたい欲求を感じた。

気持ち良くはないが、気持ち満たされる。


「こことか」

「あっっっ…」


俺は右手でヘンリィのチンコを優しく握った。

親指で先の方を撫でてやると、くちゅくちゅ音がした。

立派に勃たせて、先走りまで滲ませて。


「えっちな子だな、ヘンリィは」

「あ、ちがっっきすが、きもちよかった、だけだっえっちじゃ、ねぇっっ」


軽く上下にしごくと、ヘンリィの身体からみるみる力が抜けていく。

気持ち良いのか、開いたままの口から喘ぎ声と涎が零れた。


「ヘンリィ」


抱き寄せ囁く。

犬耳がぴくぴく震えた。

チンコを愛でる手は緩やかに絶えず動かし続ける。


「俺のこと、触ってくれんじゃねぇの?」

「あっひっ…くぅっ…」


ヘンリィは股間に与えられる直接的な快感に悶えながらも、俺の身体を触ってくれた。

それはべたべた、人を舐めまわす犬の舌のようだった。


「あっあっうっうっご、ごぉおっ」

「ん?きもちい?イっとくか?」

「やっだぁ!いっしょがいぃっ!」

「…おま、そういう可愛いことはどこで勉強してくんだ…」


限界が近そうだったので、導いてやろうとしたら我が儘ぬかしてくる。

それもとびきり甘い我が儘。

仕方がないので甘やかす。

全部こいつが悪い。


俺はチンコから手を離した。

絶頂が遠のいたのに、ヘンリィは安堵した様子で俺の顔をべたべた触る。

遠慮ないので、俺も頭を背中を優しく撫でた。


「ごぉは」

「ん?なんだよ」

「まぞく、なんだな」

「ああ、分かるのか」


俺の両頬を手の平で包みながら、ヘンリィがぽそぽそ言い始めた。

ちょっとずつ甘えたな口調になってきたな。

このたどたどしい感じ、撫で繰り回したくなる。

頬をぷにぷに


「におい、したから」

「匂い?魔族に匂いとかあんのか」

「まぞくのにおいわかる、けど、すっげぇいいにおい、した、いえから…ごぉ、すっげぇいい、においする…」

「…」


それが、俺の家に侵入した理由のようだ。

なんだ、理由はあったのか。

こいつは、ちゃんと俺を選んだのか。


「わかんねぇけど、ここなら、いーっておもった。ごぉならいいって、ちゃんとおもって、かってほしいっていった、から…まど、わって、ごめんなさい」


ぎゅうってヘンリィは俺に抱き付き、しっかり謝ってくる。

きちんとした群れに居たのだろう。

でも、親父に耐えられなかった。

逃げ出した。

逃げ場を探した。

次の巣に成る得る、居つける場所を。

それが俺の家だった。

俺、だった。

胸が痛いくらい熱い。


「…悪いって分かって謝れるなら、もういいよ」

「んっ」


慰めるように優しく抱き締めると、ヘンリィがぴすぴす鳴きながら俺に擦り寄る。

甘えるように擦り寄られて、悪い気分になるはずがない。

俺はしばらく、子犬を愛でるように頭や背中を撫で続けた。

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