時間を売る男
リクルート
時間を売る男
俺の名は西村
借金の総額二千万円
事業に大失敗し、借金が膨れ上がり、いつしか二千万円となっていた
「はぁ...」
「あなた、疲れてますね?」
夜の街中を歩いていると、スーツを着て、銀色のケースを持った男性が話しかけてきた
「だ、誰ですか、あなた」
「その借金を返せる唯一の方法を教えてあげましょうか?」
「借金って、な、なんで知ってるんですか?」
何も言っていなかったのに、なぜこの人がそんなことを知っているのか
正直、驚いていて足が震えていた
「寿命を売れば、借金2千万を返すのは軽いでしょう」
「じ、寿命? 何言ってんだあんた」
「では一度寿命を売ってみましょうか
まず30秒でどうですか?」
俺は信じていなかったが、馬鹿にしている感じで話に乗ってみることにした
「30秒で、いくらもらえるんだ?」
「30秒で3万円です お金はすぐにお渡しできます」
「じゃあ、一回やるから3万円くれよ」
「わかりました こちらの承諾書にサインをお願いします」
俺たちは街中から怪しげなバーに場所を変え、承諾書にサインをした
承諾書はとても本格的だった
「これで、3万円もらえるのか?」
「こちらの契約で承りました
では、どうぞ」
そう言うと銀のケースから3万円を出し、封筒に入れて俺に渡してきた
「本物...」
「では、またのご利用をお待ちしております」
そう言ってスーツ姿の彼はどこかに行こうとした
「ちょ、ちょっと待ってくれ
に、二千万円返すには何年売れば良いんだ?」
なんだこれ、ただで俺が3万円もらっただけじゃねえか
なら、二千万円も返せるんじゃ...
「そうですね 二千万円返すには、ざっと5時間半程度でお渡しできますね」
「売ります、5時間半くらいなら」
そう言うと彼はまた契約書をだしてきた
「こ、これで本当にもらえるのか?」
「今まとめますので、少々お待ち下さい」
そう言うと銀のケースから、これまで見たことのないくらい多い札束を出してきた
「こちらで二千万円、お間違いないですね?」
数えると、100万円の束が1...2...
たしかに二千万円だ
「では、またのご利用をお待ちしています」
俺はそこでお金をもらってからすぐに銀行に借金を返しに行った
そしてもらった3万円で豪華な夜飯を食って帰った
「ま、まだ金が欲しい...」
俺は次の日、同じ道に行くと、あいつがいた
「い、1週間寿命を売りたいんだが、良いか?」
「はい、大丈夫ですよ」
こうして俺は寿命を売ってお金を稼いだ
気づけば俺は大金持ちになり、昔とは比べ物にならないくらいリッチな生活をしていた
「じゃ、次4年売るから」
「はい、承りました」
俺はこのお金を使って会社を建て、超高層ビルに住んでいる
「し、社長、大変です! お母様が!」
「え、え...」
俺は母親ともう五年以上連絡を取っていなかった
久しぶりに母の顔を見に行くと、病院のベッドでぐったりしていた
その後、病院の先生に呼び出された
「は、母はどういう病なんですか?」
「お母さまの病気は大変治療が難しいものになります」
「か、金ならいくらでも払いますから!」
「いや、お金の問題ではないんですよ」
初めてお金でどうにもできない場面に直面した
寿命を売るようになってから、俺はいつしかお金でならなんでも得られると思い込んでいた
「どうしよう...」
俺は気づけばまたあの道に来ていた
「どうかなさいましたか?」
「じゅ、寿命を...人にあげることは可能か...?」
「はい できますよ ただし、あなた様の寿命を削ることになりますよ」
何してんだか、寿命なんてこいつが言ってるのは全部嘘に決まってるのに...
「じゃあ、1週間頼む... 相手は母で」
これで母が元気になったら、信じるとしよう...
「それはダメです」
「な、なんでだよ」
「あなた様の寿命は、もう数秒ですから」
俺はその瞬間、後ろから暴走した車に轢かれた
時間を売る男 リクルート @ztyukki
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