23. 戦力
翌朝。
レヴィアタンは周りの面々から距離を置き、屋外に立っていた。
「本当に連れてきてくれるとはね……」
その姿を窓越しにチラチラと見、雛乃は感嘆の声を漏らす。
「いやぁ、さすがだよ。私が見込んだ通りだ」
「そりゃどうも……」
雛乃はリチャードを高く評価してはいるが、今回はレヴィアタン自身にトラブルが発生したのが原因だ。リチャードはなんともむず痒い思いを抱えつつ、賞賛自体はひとまず受け取っておいた。
「さて、こうなったら、レヴィアタンの気が変わらないうちに決行する必要が出てきたね」
「……フリー達の件はどうするの? 彼らを守るのが最優先よ」
……が、その指摘に対し、雛乃は更に楽しげに答えた。
「それがね……面白いことがあったんだよ」
「面白いこと?」
「……いったい、何が?」
首を傾げるアイリスに、冷や汗を流すリチャード。
「アレックス、おいで!」
雛乃が声を張り上げる。
ビクッと肩を震わせ、部屋の片隅にいたアレックスがおそるおそる顔を上げた。
「あれ? 来ないね」
「も、もうちょっとだけ待っててあげて欲しいッス」
セドリックが涙目のアレックスに駆け寄り、その背中をさする。
そんなセドリックに勇気づけられたのか、アレックスはゆっくりと雛乃の方へと歩み寄った。
「どうやら、この子は『食べたもの』にふさわしい能力を発現できるらしい」
「食べたもの?」
「……さっき、ロビンの腕を
間抜けな声を上げるリチャードに対し、アイリスは多少察しがついたらしい。
「アイリスの言う通りだ。アレックスはさっき、ロビンとよく似た能力を使ってみせた。もっとも、
雛乃の言葉に続いて、ケリーが説明を引き継ぐ。
「だから、以前は『憤怒』の能力が使えたというわけじゃ。『憤怒』は、その力を知っていて
「私のように例外はございますが、大抵の『悪魔』の肉体には自己修復能力が存在いたしますので、多少の『捕食』には問題なく耐えられるでしょう」
「お、おう……そういうことか……」
ケリーとロビンの説明により、リチャードは目を白黒させながらも状況を理解する。
「まったく……硬いものを食えば硬くなるだの、電気を食えば放電できるだの、その程度じゃと思っておったが、なかなか優れた力を持っておる」
「……それも普通にすごくねぇ?」
「どちらにせよ、最もすごいのはわしじゃがな!」
ケリーの言葉に冷や汗をかきつつ、リチャードはアレックスの方を見る。
少年の姿をした「悪魔」は、緊張した面持ちのまま、
「つまり……私達はロビンやケリーによる『防衛』を維持したまま、同じ能力を『戦力』として使えるってことだ」
「……なるほどな」
上手くいけば、アレックス一人でロビンのように機械を操り、ケリーのように幻覚を見せ、パットのように変身でき、レヴィアタンのように身体能力を増強できる。
確かに、戦力としては申し分ない。
「後は、どう潜入してどうやって連れ出すかだね。戦闘絡みは、私が考えると
「……そうね。ありがとう、ヒナノ」
アイリスに向け、ヒラヒラと手を振る雛乃。
その様子を見ながら、リチャードはロビンに声をかけた。
「……そういえばあの人、元々はなんの研究してたんだ?」
「アンドロイドの研究と存じております。
「あー……そういう……」
ロビンの説明で、リチャードは雛乃の幅広い知識に納得する。
ふわぁ、と大きなあくびを一つし、雛乃は手元の端末を手に取る。片手で素早く何事か打ち込み、食堂の窓を全開にした。
「さて、そろそろ話に入って来ないかい?」
腕を組み、無言で佇むレヴィアタンに向け、雛乃は相変わらず
「……私は決して『協力』しに来たわけではない。
我ら、『処刑人』を
朝の光が、赤い長髪を鮮やかに照らし出していた。
そして悪魔も夢を見る 譚月遊生季 @under_moon
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