モテたいだけの高校生活だった

まさきまひろ

鈍感系っていうのもあるよね?


 何故か家にいない両親。


 ありえないほどの権力を持っている生徒会長や風紀委員長。


 美人な姉や妹。


 毎朝起こしに来る幼馴染。


 高校生なのにいる婚約者。


 女神だとか天使だとか言われているクラスメイト。


 そして一番は、自称陰キャラで髪切っただけでモテる主人公。


 「ありえねぇだろ!」


 「わかるわーまぁ設定だからある程度ぶっ飛んでいないと面白くないからねぇ。」


 昼休み、いつもの様に弁当をつつきながら話し合う。


 「主人公が納得いかん!髪切っただけでモテるようならそもそも陰キャラになんかならねぇよ!」


 「まぁなそもそもの顔立ちがいいんだろうよ。」


 「そうそう、なんか微妙な過去とかが原因で髪伸ばしたり眼鏡で隠したりな。」


 顔がよければ相当悪い性格していなけりゃモテるだろう。


 「俺も髪切ったらモテねぇかなぁ。」


 「なーモテてぇなぁ。」


 事実は小説よりも奇なり。


 なんて言葉があるけど、実際はそんなこともなくただただ平凡な毎日。


 両親もしっかり健在だし、俺は一人っ子。


 幼馴染なんていないし、生徒会長なんて名前すら知らない。


 そんな一介の高校生な俺でもやっぱり恋愛ってものをしてみたい。


 かわいい彼女と手を繋いでデートとかしてみたい。


 「彼女欲しいなぁ。」


 「なら行動あるのみだな。」


 そうこいつが言うようにモテたいなら行動あるのみだ。


 モテたいとか言うだけで努力しなきゃモテる訳がない。


 しっかり勉強して運動もしてファッション雑誌を読んだりして。


 どんな人にもやさしく行動するのみ・・・・・・














 って思って早2年。


 気がつけば高校卒業まであと半年。


 「どうしてこうなった・・・」


 「どうしてなんだろうな。」


 「俺めっちゃ頑張ったよ?全国模試も一桁だったし部活の剣道も全国優勝したよ?」


 「そうだな経歴だけでもモテ要素の塊みたいなもんだな。」


 「身だしなみにも気を使ったしどんな人にもやさしく接したつもりなんだけどなぁ・・・」


 なにが悪かったんだろうか?


 勉強、運動、身だしなみ、行動


 思いつく事は何でもやったおかげで友人は学年関係なくたくさん出来た。


 今年は生徒会副会長にもなり教師からの覚えもいい。


 あとは思いつくとしたら・・・


 「顔・・・か・・・?」


 「え?顔?いや顔は悪くないよ?保障する。」


 ならなんだ?どうしたらモテたんだ・・・?


 「俺の周りはカップルすげぇ増えたのになんで俺だけ・・・」


 「そうだねぇ時には恋のキューピッドなんてのもやったしねぇ。」


 「まぁ後の祭りってやつか、このまま卒業して大学か。」


 「大学いっても同じことするの?」


 「あまりやる気はないけどもう日課みたいなもんだしな、大学いってもやるんじゃねぇかな。」


 「そっかそっか。」


 「はぁもういいか、帰るか。」


 「りょーかーい。」


 椅子を引いて立ち上がり教室から出て行く。


 「みんなまた明日!」


 「じゃーねー」


 















 二人が去った教室では・・・


 「あの二人昔からずっと一緒だけどまだ付き合わないのかな?」


 「え?付き合ってんじゃねぇの?」


 「彼女の前でモテたいとか言わないだろ?」


 「本人は気がついていないけどすごいモテてるのにね。」


 「誰が見ても彼女にしか見えない女の子と常に一緒なんだから誰も告白なんてするはずないもんね。」


 そんな会話が行われていた。


 窓から見える二人の影は手を繋いでいるように見えた。

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モテたいだけの高校生活だった まさきまひろ @masakimahiro

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