タイトルが「空を走る」ですと?
いえ、何でもありません。
AIに書かせた偽書で色々説明させて、それはやっぱり偽書だから本当なのかどうかはわからないって演出は非常に面白いのですが、ずるいとも思いますね。
しかし、序盤でシンギュラリティを突破したとあるわけで、それならAIの詞は葵の本心よりも的確に事象を把握していたとも受け取れます。
そんなところがなかなか面白いです。
このストーリーなら序盤のパンデミックは不要な気がします。
それと、葵の論理が偏っているせいで全体的に難解になっているのは良いアクセントになっていると思うのですが、個人的には残念な部分です。作品が理解を拒絶していると感じてしまうからです。
感想は以上です。
作者からの返信
暗黒星雲さま!
コメントありがとうございます。少し弁明させていただきますね。
>AIに書かせた偽書で色々説明させて~
これは、AIという人間の代わりではなく別個の存在を通してみた人間の姿であります。
しかし、AIがやりたかったのは葵さんの細胞の一つ一つまで理解し把握するというのではなく、あくまで「彼女の孤独を普通の人にわかりやすく伝える」ことです。
孤独は理解されないから孤独なので、内情を理解することは出来ません。つまりここでAI詞が「この人はこういう人です」と断言してしまうと、それは孤独ではないのです。
でも外側、概念を理解することは出来ます。それはすなわち、「わからないことがある」ということ(それこそが、学問と科学を発達させてきた行動原理ではないでしょうか)
理解することではなく、理解し続けようと生きることに意味がある、とAI詞は考えたのです。
AI詞はひょっとしたら本人以上に葵さんを理解したかもしれない、けれど、それには意味が無いのです。
難しく長い名作を簡単にあらすじにまとめても、名作を書いたことにはならないのですから。
>このストーリーなら序盤のパンデミックは不要な気がします。
これは、「科学が急激に発達しても、使う人間がついていけない」問題にあります。
道具を作っても、道具を生かす環境を変えるのが面倒くさい或いは怖くて、結局忌避してしまうのです。
ところが急激に環境が変わりますと、人はゴキブリレベルの適応力を見せます。
実際大学の授業もパンデミックでようやくリモートに踏み切ったわけだし。
ただ、そのような印象を受けさせてしまったことに関しては、間違いなく作者の技量不足でございます。うん、もうちょっと考えようね私。
>それと、葵の論理が偏っているせいで全体的に難解
上記は「孤独があるから理解し続けようとする」「天才に凡人がついていけない」という二点を挙げました。
《偽書》は、「天才が凡人に教える物語」では無く、「凡人が天才においつく」物語です。葵さんという何かすごいんだけどついていけないやばたにえんな人がいる、でも理解したいと100年思い続けた人類のために、AI詞が理解する手助けをしようとしたものであります。
天才とは凡人に理解できないから天才なのです。
ええ、決して技量が追いつかず知識もない作者がお茶を濁して天才感を出した訳ではありませぬ。
……読み合い企画で出すもんじゃねーなこれ!!!!
なので葵さんの偏りは偏っているのではなく描いている私が偏って理解し考えているのですきっと。責められるべき相手は私である……
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
自分は彼にはなれず、彼も自分にはなれない。
当たり前の事ではありますが、葵にとってそれに至るまでの道のりは果てしなく長いものでしたね。
こんな彼女の思考も決意も、あくまでAIが導き出したシュミレーションの結果。正解に限りなく近いのかもしれないけれど、それが本当に正解かどうかは、葵自身にしかわかりませんね。
作者からの返信
無月兄さま!
他者のことを理解していながら自分のことがわかっていたなかった葵さんは、人と自分の境界線を上手く引けませんでした。生死の基準もよくわかっていなかったです。
詞さんという「別個の存在」を受け入れて、ようやく彼女は人を理解できないもどかしさ寂しさ、別れを知りました。
このお話は、AI詞が想像した葵さんの姿。
でも、人に正解を求められ続けたAIが、葵さんを思って自ら積極的に答えを出そうとしたのは、葵さんの望みであります。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
編集済
呼吸器外す時に、SF定番の脳転写系のあれこれしたのだろうと思って読んじゃってました!
脳みそに焼きつけて、意識を転移させる系の技術を使って殺しちゃったのかな、とか。脳内領域に本当に突っ込んだんだろうなって……。
自力再現でしたかぁ……完全に想定外でした。けれど、このAIは、二人の子だと思いました。
作者からの返信
祟さま!
それも良かったですね……思いつきもしなかった……(←徐々に祟さまに影響される私)
でも結局、葵さんは詞さんには出来なかったかなぁ。
ちなみに、オリジナル詞は葵さんを呼び捨てにし、AI詞はさん付けなのは、
「どちらの詞も同級生に対してはフランクで、年上には敬意を示さなくてはならないと考えていた」
という設定があります。
葵はそこで「違う対応だけど根が同じだなぁ」と思った、という話を入れ損ないました。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございます!!
おお、これは、素晴らしいです。
とても深淵なる哲学の世界に踏み込んだような感でしたね。
最後の二行の詞コピーのシミュレーションの内容、おそらく間違ってることはないでしょうが、それでもインプットされたデータが完全だったという保証はありませんからね。こりゃ考えすぎるとハマるやつですね。
超面白かったです!
ところで、台風で停電したら生命維持装置も停電しちゃったりしないんですか?もしかしてバッテリー駆動?
作者からの返信
ゆうすけ様!
理系じゃないあたしが出来ることなんて無理やり哲学にぶっ込むことです! コメントありがとうございます!
このAI詞の完璧でないシュミレーションは、私たちが友達と思っていたり家族だと思っていたりする相手でも同じことだと思います。
だからこそ、他者から見た自分を知ることも出来るのでしょう。内面も外面も合わせて知るから、人は自分を好きになるのだと思います。
止まったら死にます!
ので、停電したら別のバッテリーが動くようになってます!! そうコナンくんが言ってました!(世紀末の魔術師、工藤新一への挑戦状など)
編集済
「偽書」読んでようやく色々納得に至りました。
2話までの時点では♥はつけられても感想にできず。
葵は「すべてはFになる」のあの天才女史を思わせる孤高の人物ですね。
興味深いおはなしでした。
追記。
紅子さんのほうでしたか!
あのシリーズは二段組から一段組になった時点で基本見限った(笑)んですが、そこまでは面白く読んでたんです!
作者からの返信
江戸川ばた散歩さま!
江戸川様はいつも私の根本的な何かを見通しておられるっっっっっっ……………!
ただ、どっちかと言うとうちの葵しゃんは紅子さん寄りなイメージです。浮世離れしてるけど世俗的なのです。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございます! これにて完!
正直に、とても難しかったのですが。
最後まで一気に読んでしまう不思議な吸引力がありました。
〉詞という人間が今まで生きていたことを世に知らしめるためだった。
色々な考えが頭をぐるぐるするなかで、この一文(というか、葵の行動)は妙に刺さりました。
ことの正統性はさておき、生あるものだからこその殺人。議論も巻き起こる。
親友を殺したの、で始まる物語の真相として、とても響きました。
作者からの返信
いいの すけこさま!
いけない、その1文さっき訂正した時に消しちゃった。追加しましたー!
コメントありがとうございます。
難しい話、というか、あえて理解しづらい物語に仕立ててますので、読者には優しくないお話です! 正解!&申し訳ない!
そして《偽書》は、AIである詞が産み親の気持ちを考えて描き、「恐らく冷酷無比のイメージで定着したであろう葵」の印象を変えるために発表したものでした。なのでやっぱり殺したかはわからないまま。
でも誰の代わりでもないAIの詞が、自分で考えて行動した最初の一歩です。
何か、考えるきっかけになったら幸いです。
「偽書」の意味、こういうことか!と思いました。
とても深い作品でした。ロンズさまらしい作品、
と、ここまで書いて、「誰々らしい〇〇」という言い回しも「他人のすべての情報を知ることができないのだから、他人のことを完全に理解することなど決してできないのだ」というこの作品のひとつのテーマ(私の読み違え・曲解だったらごめんなさい)に反するのでは?と思ってしまい、思わず手が止まってしまいました。
「たったの数作読んだだけなのに何様だ!」と、言われてしまいそうですね。
ともあれ、難しくてわからない所もあったけれど、とても考えさせられました。
また時間を置いて読み返しに来たら、今日は分からなかったことが分かってきたりするのでしょうか。
その時が楽しみです。
作者からの返信
くるくまさま!
素敵なコメントありがとうございます!
私が描きたかったテーマが伝わっていて嬉しいです。
感想だと不便なので「らしい物語」で大丈夫ですよ!!!
全てを知らなくても愛せるのが人間です!
私も、書いてからわかることがあると思います。また書くネタが出来そうです