名月にわれは服ほす男かな

【読み】

めいげつにわれはふくほすをとこかな


【季語】

名月〈秋〉


【語釈】

名月――陰暦8月15日の月(芋名月)。また、陰暦9月13日の月(栗名月・豆名月)。

[デジタル大辞泉]


【大意】

わたしは、(仲秋の)名月にのぞんで服をほすような男であるよ。


【付記】

芭蕉(1644-1694)の句を本句とするものである。


近年はかなり温暖なようだから、仲秋の名月の夜に、屋外に服をほしてもある程度乾くかもしれない。しかるに晩秋の十三夜ともなるとさすがに冷え込んで、よほど温暖な土地でもないかぎり外干しには適さないかと思う。


俳句では単に「名月」というと、仲秋の名月をいうならいのようである。


【例句】

朝顔に我は飯食う男哉 芭蕉

草の戸に我はたで食ふ蛍哉 其角きかく


名を捨てて月もや山に御隠遁ごいんとん 季吟きぎん

名月や池をめぐりてもすがら 芭蕉

名月や北国日和定めなき 同

名月や畳の上に松の影 其角

名月や竹を定むるむら雀 同

名月や琴柱ことぢにさはる栗の皮 園女そのめ

名月に死なば柱の木陰かな 支考しこう

名月やすらりと高き松の上 木導もくどう

名月や壁に酒のむ影法師 半綾

名月や星地に落て小蛤こはまぐり 存義ぞんぎ

名月やうさぎのわたる諏訪すはの海 蕪村

名月や神泉苑のうを躍る 同

名月や辛崎の松せたのはし 几董きとう

名月やはうきにかかる露の玉 寥松りようしょう

名月や家より出て家にいる 一茶

名月を取つてくれろとなく子かな 同

名月や故郷遠き影法師 夏目漱石

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