ありあけのねむたき顔やあさぼらけ

【読み】

ありあけのねむたきかほやあさぼらけ


【季語】

ありあけ(有明/在明)〈秋〉


【語釈】

ありあけ――①陰暦16日以後、月が空に残りながら夜が明けること。また、その月。ありあけのつき。ありあけづき。②広く、夜明けをいう。明け方。③「有明行灯(ありあけあんどん)」の略。④「有明桜」の略。

[デジタル大辞泉]


あさぼらけ(朝ぼらけ)――夜のほのぼのと明けるころ。夜明け方。「あけぼの」より少し明るくなったころをいうか。

[デジタル大辞泉]


【大意】

ありあけの顔もねむたい、夜の明けるころである。


【付記】

夜が明けるころに空に残った月の顔がねむたいとも、そのころのひと(なかんずく詠み手たるわたし)の顔がぬむたげだとも読めるであろう。朝はねむたいものだとの観念を率直に言った。


【例歌】

むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな 素性そせい

有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし 壬生みぶの忠岑ただみね

朝ぼらけ有明の月とみるまでに吉野の里にふれる白雪 坂上是則さかのえへのこれのり

ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞのこれる 藤原実定

是則がまだめのさめぬ朝ぼけに在明の月とみたるしら雪

郭公ほととぎすなきつるあとにあきれたる後徳大寺の在明のかほ 蜀山人


朝月の日向ひむかの山に月立てり見ゆ遠妻を持てらむ人し見つつ偲はむ


玉くしげあけて見つれど朝ぼらけ二見の浦はなほ浪ぞ寄る 藤原高遠ふじわらのたかとお

明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな 藤原道信

朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木あじろぎ 藤原定頼


【例句】

猪の寝に行く方やあけの月 去来きょらい

有明の月になりけり母の影 其角きかく

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