茶ばたけに霜やむころやむぎのあき

【読み】

ちやばたけにしもやむころやむぎのあき


【季語】

むぎのあき(麦の秋)〈夏〉


【語釈】

むぎのあき――=むぎあき(麦秋)

[精選版 日本国語大辞典]


むぎあき(麦秋)――(「麦秋(ばくしゅう)」の訓読み)麦の実り熟する時節。初夏の頃。麦の秋。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

茶畑に夜霜が降りるのがやむころ、麦は実りのときをむかえるのであった。


【付記】

俗に「八十八夜の別れ霜」と言い、立春から数えて88日目ごろの夜に最後の霜が降りるとされたと言う。「忘れ霜」や「別れ霜」は晩春の季語となっている。茶摘み唄に「夏も近づく八十八夜」とあるように、その霜害が茶農家などに警戒されたようである。


標題の句は、「霜」「秋」などの語を用いつつ初夏の訪れをよんだものである。それくらいのもので、あまり芸はないかと思う。


【例句】

陰うらも日なたの風や麦の秋 嵐青らんせい

麦秋やとんぼうとまる淵の上 和求

深山路みやまぢを出抜けてあかし麦の秋 太祗たいぎ

麦秋や埃にかすむ昼の鐘 同

病人のかごも過けり麦の秋 蕪村

麦秋や何におどろく屋ねの鶏 同

麦の秋さびしきかほの狂女かな 同

夕暮や野に声残る麦の秋 楚秋

麦秋や雲より上の山畠 梅室ばいしつ

見渡せば庄屋也けり麦の秋 琴風きんぷう


花過てよし野出る日や別れ霜 几董きとう

とまあけて見るや夜船の別霜 吟江ぎんこう

鴬も元気を直せ忘れ霜 一茶


猫の恋やむときねや朧月おぼろづき 芭蕉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る