こし春をうたがはめやも百千鳥

【読み】

こしはるをうたがはめやもももちどり


【季語】

春来たる・百千鳥〈春〉


【語釈】

めやも――「めや」の反語の意に詠嘆の意が加わったもの。……することがあろうか、いやそんなことはない。どうして……でなどあろうか。

[精選版 日本国語大辞典]


百千鳥――① 数多くの小鳥。また、いろいろな鳥。百鳥(ももとり)。②「チドリ(千鳥)」の異名。③「ウグイス(鴬)」の異名。古今伝授三鳥のうちの一つといわれる。④=モズ(百舌)⑤植物「キケマン(黄華鬘)」の異名。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

春の来たことをどうして疑いなどしようか。さまざまな小鳥が鳴いているのを耳にすれば。


【付記】

「百千鳥」は古今伝授三鳥(説明は割愛する)のひとつ(ウグイスと目されているらしい)とされるが、実際にはさまざまな意味でつかわれたようである。読むときは注意したい。


「千鳥」が冬の季語の季語なのに「百千鳥」が春なのは、春が百花さきみだれる季節であればこそかもしれない。


【例歌】

梅の花今盛りなり百鳥の声のほしき春来たるらし 作者不詳

吾が門のもりはむ百千鳥千鳥は来れど君そまさぬ 作者不詳

友をなみ川瀬にのみぞ立ちゐけるももちとりとは誰かいひけん 和泉式部

ももちとりこ伝ふ竹のよの程もともにふみ見しふしぞうれしき 藤原定家


ひさかたのあめ香具山かぐやまこの夕霞たなびく春立つらしも 作者不詳

春のくるあしたの原を見わたせば霞もけふぞ立ちはじめける 源俊頼みなもとのとしより

けさ見れば山も霞みてひさかたのあまはらより春は来にけり 源実朝


鴬の声を聞きつるあしたより春の心になりにけるかも 良寛


【例句】

河上は柳かうめか百千鳥 其角きかく

ももちどりいなおふせ鳥呼子よぶこどり 淡々たんたん


春立つやにほんめでたきかどの松 徳元とくげん

春立つは衣の棚の霞かな 貞徳ていとく

焼寺やけでらも春来て萩のわか葉哉 几董きとう

門々の下駄の泥より春たちぬ 一茶

春立つや愚の上に又愚にかへる 同

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