西行のさくら見に来よ塚の塵

【読み】

さいぎやうのさくらみにこよつかのちり


【大意】

西行のサクラを見においでください。故人の塚(=墓)の塵になるべきその花を。


【付記】

西行(1118-1190)ほどサクラを多くよんだひとは皆無にひとしいだろう。その花のしたで入滅することを願って歌をよみ、その願いどおりになったと評判されるほどである。


「西行のさくら」とはやや曖昧な表現である。西行は旅人だったと聞こえるが、西行ゆかりの地といえば何はなくとも吉野であり、西行のサクラと聞けばその山のものと思うひとが多かろう。しかるに、「西行桜」は京都は嵯峨の法輪寺の南にあるそれを指すことが多いようである。なお、「西行桜」は春の季語のよし。


サクラの下には死体が埋まっているとの物騒な都市伝説は、だれもが一度は耳にしたことがあるだろう。それさえ西行の功績(?)のように思ってしまうのはズレているだろうか。


【例歌】

願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ 西行

仏には桜の花をたてまつれ我がのちの世を人とぶらはば 同


【例句】

年々や桜を肥やす花の塵 芭蕉

散る花や鳥も驚く琴の塵 同

鳥雲にるや浮世は花の塵 尾崎紅葉


草枕まことの華見しても来よ 芭蕉


塚も動けわが泣く声は秋の風 芭蕉

当帰よりあはれは塚の菫草 同


西行と遊行ゆぎやうは春のにしきなり

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