木瓜垣をすいてさゆるや月のかげ

【読み】

ほけがきをすいてさゆるやつきのかげ


【季語】

冴ゆ〈冬〉


【大意】

ボケの垣根のすきまを通ってさえわたる月のひかりである。


【付記】

「月」は秋の季語、「木瓜(の花)」は春の季語である。ここでは(月光が)さえるとあるので、冬とするのは謂われのないことではあるまい。


ボケは春に葉に先立って花がさくので、冬にはたいてい枯れつくしている。月光がその垣根をもれて差すのは冬らしい光景と言えるだろう。


【例歌】

ささの葉におくしもよりもひとりぬる我衣手ぞさえまさりける 作者不詳

霜さゆるみぎはの千鳥うちわびてなくね悲しき朝ぼらけかな

衣手のさえゆくままに細枝しもとゆふ葛城山かづらきやまに雪はふりつつ 源俊頼

衣手によごの浦風さえさえてこだかみやまに雪降りにけり 源頼綱

さざ浪や志賀のから崎風さえて比良の高嶺にあられ降るなり 藤原忠通ふじわらのただみち

布引の滝も夜寒にこゑさえて生田いくたのおくに衣うつなり 藤原家隆


【例句】

冴えそむる鐘ぞ十夜の場の月 杉風さんぷう

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