あら冷たきのふのふろを落としみづ

【読み】

あらつめたきのふのふろをおとしみづ


【季語】

冷たし〈冬〉


【語釈】

あら――物事に感動したり、驚いたり、意外なことに気がついたりしたときに発する語。ああ。まあ。現代では主に女性が使う。

[デジタル大辞泉]


落としみづ(落とし水)――稲を刈る前に、田を干すために流し出す水。また、その仕事。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

ああ冷たいなどと(内心で)言いつつ、きのう風呂にわかした湯を落とし水よろしく抜くのであった。


【付記】

「落とし水」は秋の季語である。ここでは比喩として使っているが、水をながすことやその水を「落とし水」と称することは特に問題ないかと愚考する。田んぼのない土地に住んでいると、風呂の湯を抜くことを落とし水と称してながめてみたくなるものである。


推敲前は、中七「ふろをけの湯を」。


落とし水の句は、ほとんど与謝蕪村(1716-1784)の独擅場になっているとわたしにはみえる。他の俳諧師( ≒ 俳人)らに比して百姓にむける関心が高かったのだろうか。


【付記】

落水田ごとのやみとなりにけり 蕪村

落し水柳に遠く成にけり 同

阿武隈や五十四郡ごじふしぐんのおとし水 同


あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁ふぐとじる 芭蕉

あらたふと青葉若葉の日の光 同

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