らんの香にゐつく探偵事務所かな

【読み】

らんのかにゐつくたんていじむしよかな


【季語】

らんの香(蘭の香)〈秋〉


【語釈】

らん――①ラン科の植物の総称。世界中に約2万種、日本にはシュンラン・カンラン・シラン・セッコクなど200種近くが知られる。花は独特な形態をしていて美しいものが多く、観賞用に栽培される。②植物「フジバカマ(藤袴)」の異名。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

ランの匂いにさそわれるように、探偵事務所に居着くのであった。


【付記】

某漫画の作品による。


先に記したように、ランはラン科の植物の総称である。西洋ランが舶来するまでは東洋ランを言ったにちがいないが、どの種・品種がとりわけ好まれたのかはよく分からない。「蘭」の字はもともとフジバカマを指したよし。アララギと訓ずる場合もあるが、その場合ランを指すことはないようである。


推敲前は中七「もぐる探偵」。


【例句】

蘭菊の栄る庭や狐福 一武

蘭の香や蝶のつばさにたき物す 芭蕉

椽側にさし入る月や蘭の花 涼菟りょうと

蘭の香にはなひ待つらん星の妻 其角きかく

蘭咲きぬ鼻にも秋を驚かせ 也有やゆう

蘭の香や菊より暗きほとりより 蕪村

まんじゆさげ蘭に類ひて狐啼く 同

月落ちてひとすぢ蘭の匂ひかな 大江丸おおえまる

蘭の香や糸なき琴のしらべより 青蘿せいら

蘭のかや異国のやうに三ヶの月 一茶

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