底冷えや京ならずともゆかの板

【読み】

そこびえやきやうならずともゆかのいた


【季語】

底冷え〈冬〉


【語釈】

底冷え――からだのしんそこまで冷えること。しんそこから感じる冷気。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

床板をふむときは京都ならずとも底冷えがすることである。


【付記】

近畿以外ではどうかしらないが、ふゆの京都の底冷えは有名である。それは京都が盆地に位置するためと聞くが、となりの奈良や滋賀、亀岡が底冷えすると聞いたことはない。なお、京都は夏の暑さでも有名である。冬はさむく夏はあついこの地に都が千年も置かれていたことに驚く。


「京の底冷え」の「底」を盆地の底のこととわたしは思い込んでいた。そのような発想のもとで、家の底をなす床板をふむときは京都ならずとも底冷えを味わえると苦笑しているのである。


下五は語順をいれかえて「板のゆか」としても内容的には劣後しないと思う。そこで内容とおなじくらい大切な形式の話しになる。「床板」とはいっても「板床」とはまず言わない。ために、前者に格助詞を挿入して五文字とするのが口になじみやすく、口になじみやすいものがより良いとの結論に達した。ヤマノイモをして「芋の山」と言うことを是とするようなひとなら別のこたえを選ぶかもしれないが、わたしは語順を反転させるのもほどほどにしたい。


「底冷え」は「冷たし」とつながりのふかい季語と目されているようである。また、「下冷え」なる秋の季語があるよし。


【例句】

底冷やいつ大雪の朝ぼらけ 此筋しきん


名月の松はつめたき光り哉 怒風どふう

きりぎりすなくやつめたき枕かげ 沙明しゃめい

君が手のつめたさ見たり蚊帳の月 几董きとう


なにはや京を寒がる御忌詣ぎよきまうで 蕪村


ひやひやと壁をふまえて昼寝哉 芭蕉

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