ねこの喪に服してしるや鉢叩
【読み】
ねこのもにふくしてしるやはちたたき
【季語】
鉢叩〈冬〉
【語釈】
鉢叩(鉢敲)――時宗に属する空也念仏の集団が空也上人の遺風と称して、鉄鉢をたたきながら勧進すること。また、その人々。これは各地に存したが、京都市中京区蛸薬師通油小路西入亀屋町にある空也堂(光勝寺)が時宗鉢叩念仏弘通(ぐづ)派の本山(天台宗に改宗)として有名。11月13日の空也忌から大晦日までの48日間、鉦(かね)をならし、あるいは鉢にかえて瓢(ふくべ)を竹の枝でたたきながら、念仏、和讚を唱えて洛中を勧進し、また洛外の墓所葬場をめぐった。また、常は茶筅を製し、歳末にこれを市販した。
[精選版 日本国語大辞典]
【大意】
ネコの喪に服して鉢叩を知るのであった。
【付記】
ネコはひろい意味での家畜のひとつだがいまでは家族同然の存在とされ、のみならず実の家族よりふかく愛されることも珍しくないらしい。飼い猫の死に目にあうかなしみがあまりに深いため、もはやそれを飼えない人さえいると聞く。国民的アニメとされる『サザエさん』の磯野・フグ田両家にタマがいて、『ドラえもん』の野比家にネコ型ロボットが住みついている点も、わたしとしては見逃せない。
「鉢叩をしる」とは、鉢叩が行われていたことを知るとも、鉢叩のあわれさを知るとも解釈できるであろう。「知る」の意味しうるところは広い。
お察しかと思うが、わたしが鉢叩をしたしく見物したことはない。京都の洛中のあたりに住んでいる人なら、いまでも多かれ少なかれ縁があるのだろうか。
ときに、松尾芭蕉(1644-1694)の名高い句のうちにある「空也」とは、空也上人(903-972)その人ではなく、鉢叩を行なう「空也僧」のことらしい。すこし前に知った事実である。
余談だが、ホトトギスの異名のひとつに「空也上人鳥(くうやしょうにんどり)」があるよし。
【例句】
鉢叩き夜更けて道の広さかな
鉢たたき来ぬ夜となれば
今すこし年寄見たし鉢叩き
千鳥なく鴨川こえて鉢叩き
船岡に影こほらすや鉢叩
一月は我に
裏門の竹にひびくや鉢たたき 同
弥兵衛とは知れど
夜泣する小家も過ぬ鉢叩き 蕪村
鉢叩き月下の門をよぎりけり
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