風のふくかたを恵方ぞはつ参り
【読み】
かぜのふくかたをゑはうぞはつまひり
【季語】
恵方(兄方/吉方)・はつ参り(初参り)〈新年〉
【大意】
恵方――その年の十干(じっかん)によって定められる、最もよいとされる方角。その方向に歳徳神(としとくじん)がいるとされる。吉方(きっぽう)。明(あき)の方(かた)。
[デジタル大辞泉]
はつ参り――「初詣(はつもうで)」に同じ。
[デジタル大辞泉]
【大意】
風の吹いて行く方角を恵方とする初詣である。
【付記】
平成のころから節分の日に恵方巻きを食べる風習が全国的に喧伝されるようになったようである。聞けば大阪あたりの局地的な風習だったという。わたしはそれを全国にひろめるような態度に賛同しかねる。
恵方参りの初詣は江戸時代に江戸、京、大阪を中心に節分(=立春の前日)の行われており、その一方で大みそか(=十二月の末日、元日の前日)の夜に家の主人が氏神の社に行く風習が地方にあったという(「世界大百科事典 第2版」)。現在の初詣はそれら複数の風習に起源を持つようであり、それが確立したのは早くても明治時代のことであろう。世に伝統とされるものが江戸時代やそれ以前のすがたを忠実につたえている例は、数えるほどしかないのではないかとさえ思う。
当時はいざしらず、現代に恵方を尊重する必然性はほとんど見当たらない気がする。年毎に縁起の良い方角がかわるということがわたしにはどうも分からない。初詣に行くにしても、方角にこだわらず気の向くままにするのがより良くはないか。
【例句】
足の向く村を我らが恵方かな 一茶
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