平成のかぜや身にしむひとりつ子

【読み】

 へいせいのかぜやみにしむひとりつこ


【季語】

 身にしむ(身に入む/身に沁む/身に染む)〈秋〉


【語釈】

 身にしむ――①骨身にしみとおる。しみじみと身に味わう。痛切に感じる。身に入る。②寒気、冷気などが強く身に感じられる。③深く心に思いこむ。心からうちこむ。[参考:精選版 日本国語大辞典]


【大意】

 ひとりっ子のひとには平成のかぜが身にしみることであろうか。


【附記】

 一人っ子がめずらしくなくなったのはいつごろのことであろう。平成に突入した時点ですでにそうなっていたかと推測した。ちなみにわたしは一人っ子ではない。


 推敲前、中七「かぜ身にしむや」。推敲前は断定的、推敲後は推測的なひびきがあるであろう。「や」にはいわゆる治定詠嘆の、疑問反語のがあり、文脈から判断するほかない場合もある。


【例歌】

 夕されば野べの秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里 藤原俊成

 玉だれのこすのひまもる秋風にいもこひしらに身にぞしみける 源実朝


【例句】

 身にしむや香炉の煙秋の風 徳元とくげん

 身にしむはわきあき風のたもとかな 玄札げんさつ

 野ざらしを心に風のしむ身哉 芭蕉

 身にしみて大根からし秋の風 同

 鳩の声身にみわたる岩戸哉 同

 秋といふ風は身にしむ薬哉 其角きかく

 待宵の身にしむ恋や絹袷きぬあはせ 定雅ていが

 月も身にしむや大根だいこのからき宿 道彦みちひこ

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