万緑のなかややまぶき五六本
【読み】
ばんりよくのなかややまぶきごろくほん
【季語】
万緑〈夏〉
【語釈】
万緑――草木が見渡すかぎり緑であること。[参考:デジタル大辞泉]
【大意】
見渡すかぎりの緑のなかに、黄色な花のヤマブキが五六本生えていることである。
【附記】
目についたものを即興的によんだ「嘱目」の句である。有名な漢詩句「万緑叢中紅一点」による。
「やまぶき(山吹)」は春の季語。本文(ほんもん。もとになった文章)が春の景であるらしいことを思えば、標題の句も春と見るべきか。
「万緑」は、中村草田男(1901-1983)の代名詞的な句によって季語としての地位が定着したとの逸話がつたわる。
「五六本」はゴロッポンでもゴロクホンでも苦しくない。
【例歌】
やまぶきの立ちよそひたる山清水くみに行かめど道の知らなく
かはづ鳴くかむなび川に影見えて今か咲くらむやまぶきの花
うら若き尼の
春駒のあゆみもおそし
ゆく春の春日の宮の玉垣の松の根にちる山ぶきの花 与謝野晶子
【例句】
雲を根に富士は
山吹の
ほろほろと山吹ちるか滝の音 芭蕉
山吹や羽織のならぶはしの上
鯉の瀬や山吹の
山吹にさきだつ雨やみのひとつ
山吹はさかで蛙は水の底 同
やまぶきや口すすぎたき水の影
山吹や水は流てもとの影
山吹やとへばこたへの
山吹や井手を流るる
やまぶきや水の
やまぶきの花の下ゆく芥かな
折ばちる八重山吹の盛かな
山吹やさしぬき濡るる
山吹や鍋炭流す人は誰 竹也
山吹のみな一重めくさかりかな
山吹や
山吹の淋しくも家の一つかな 夏目漱石
山吹に手鍋洗ふや恋女房 寺田寅彦
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