世のひとのはたらくころか朝すずみ

【読み】

 よのひとのはたらくころかあさすずみ


【季語】

 朝すずみ(朝涼み)〈夏〉


【大意】

 ときはいま世間のひとびとが働いているころであろうか。わたしはこの朝のすずしさを満喫していることである。


【附記】

 平日に休みがあって、二度寝などしつつ自堕落に朝を過ごしている趣旨である。

 上五を「世のひとの」とするか「世のひとは」とするかをめぐって葛藤がある。(てには)のをくせ者と思うこころが、助詞の重複をさけたい気持ちにわずかに勝っている状態である。


【例句】

 命なりわづかの笠の下涼み 芭蕉

 楽しさや青田に涼む水の音 同

 飯あふぐかかが馳走や夕涼 同

 あつみ山や吹浦ふくうらかけて夕すずみ 同

 川風や薄柿着たる夕涼み 同

 神主も涼むけやきの古木かな 句空くくう

 蚊ののらぬ所までいざ涼み舟 惟然いぜん

 更くる夜を隣にならぶ涼みかな 去来きょらい

 砂川をわたりてあそぶ涼みかな 土芳とほう

 菜種ほすむしろの端や夕涼み 曲翠きょくすい

 海を見て涼む角あり鬼瓦 其角きかく

 この舟に老いたるはなし夕すずみ 同

 六尺の池に風あり朝涼み 露川ろせん

 洗濯も夜なべかけたる涼みかな 同

 ゆひ髪や鏡はなれて朝涼 鬼貫おにつら

 ぬけ果し涼みのあとやえんの月 丈草じょうそう

 夕すずみあぶなき石にのぼりけり 野坡やば

 はぜいささ底のみるめを涼みかな 支考しこう

 三味線に秋まだ若し涼み舟 同

 夕闇や腰にかぎ鳴る門涼かどすずみ 北枝ほくし

 みす下げてが妻ならん涼み舟 秋色しゅうしき

 木母寺もくもじへ世をのがるるや涼み船 柳居りゅうきょ

 長明はいかに見るらんすずどこ 一鉄

 むかしむかし祖父も川へと涼哉 也有やゆう

 まし水にあやうき橋を凉かな 太祇たいぎ

 涼み舟に立ち尽す列子かな 蕪村

 僧一人みなかみへ行くすずみかな 麦水ばくすい

 夕涼み由々しき忘れ刀かな 完来かんらい

 ゆく水の四条にかかるすずみ哉 蒼虬そうきゅう

 来ぬ人のかはりに涼むゆふべ哉 鳳朗ほうろう

 門の木もまづつつがなし夕涼 一茶

 楽剃らくぞりや涼みがてらの夕薬師 同

 狐火の行衛ゆくゑ見送る涼みかな 同

 うをどもや桶とも知らで門涼み 同

 夕涼みさてもいのちはあるものぞ 作者不詳

 夜納涼よすずみただすの川辺人白し 内藤鳴雪

 海中の岩飛びわたる納涼かな 同

 夕涼月欄干にのぼりけり 正岡子規

 雷も涼みに出たり海の上 尾崎紅葉


 おもしろき秋の朝寝や亭主ぶり 芭蕉

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