夏草やひと日見ぬまに背たけほど

【読み】

 なつくさやひとひみぬまにせたけほど


【季語】

 夏草〈夏〉


【大意】

 一日見ないうちにひとの背丈くらいにまで伸びている夏の草よ。


【附記】

 「世の中は三日見ぬ間桜かな」の形で人口に膾炙したという、大島蓼太(1718-1787)の句の本句取りである。正岡子規(1867-1902)は件の句を低俗として退けていたようだが。

 農作物を育てるにあたって圧倒的に手間がかかるのは草刈りであると言うことにも得心がいく。


【例歌】

 このころの恋のしげけく夏草の刈りはらへども生ひしく如し 作者不詳

 夏草のしげりにしげる我が宿は狩りとだにやは訪ふ人はなし 良寛

 夏草は窓にとどけり籠りゐる一人ごころに堪ふるこのごろ 島木赤彦


【例句】

 石の香や夏草赤く露暑し 芭蕉

 夏草や兵共がゆめの跡 同

 夏草や我先達ちて蛇狩らん 同

 夏草に富貴ふうきを飾れ蛇の衣 同

 夏草に世をゆづりてや影の沼 桃隣とうりん

 夏草の鎌さへ錆て哀なり 乙由おつゆう

 よく見れば朝露もちぬ夏の草 登舟

 夏草や立ちよる水は金気水かなけみづ 一茶


 世の中は三日見ぬ間に桜かな 蓼太りょうた

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