春の夜の眠りをさます新茶かな

【読み】

 はるのよのねむりをさますしんちやかな


【季語】

 新茶〈夏〉


【語釈】

 新茶――春に出てきた新芽を摘み、その年、最初に生産される茶。普通、緑茶についていう。さわやかな味わいとすぐれた香気があり、年間でもっとも品質のよいものとして好まれる。「一番茶」ともいう。[参考:飲み物がわかる辞典]


【大意】

 春の夜の穏やかな眠りを覚ます新茶であるよ。


【附記】

 新茶が出回るのは4月の末から5月頃のことと聞く。春が去って夏が来ることを新茶に象徴させた(立夏は例年の5月6日頃)。


【例歌】

 泰平の眠りを覚ます上喜撰じやうきせんたつた四杯で夜も寝られず 作者不詳


 ながむれば衣手かすむひさかたの月のみやこの春のよの空 源実朝

 よろづみな闇にただよふ春の夜のま底に深くうみはしづめり 古泉千樫


【例句】

 風かほるはじめは山の新茶かな 露川ろせん

 関守もねさせぬ須磨の新茶哉 支考しこう


 春の夜やこもゆかし堂の隅 芭蕉

 春の夜の餅や智月ちげつのこがすらむ 乙訓おとくに

 鼠共春の夜あれそ花靭はなうつぼ 半残はんざん

 春の夜も傾く月や連歌町 召波しょうは

 春の夜や雨をふくめる須磨の月 青蘿せいら

 熊坂に春の夜しらむたきぎかな 几董きとう

 春の夜や家鴨あひるにまじる都鳥 成美せいび

 春の夜の刀預る恋もあり 内藤鳴雪

 燈台の油ぬるむや夜半よはの春 芥川龍之介

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