雪舞ふや抱きあふ母と子のうへに

【読み】

 ゆきまふやだきあふははとこのうへに


【季語】

 雪〈冬〉


【大意】

 抱き合う母と子の上に雪が舞い散るのであった。


【附記】

 特に根拠はないが、母が我が子を思う心にくらべれば、男が恋人や妻を思う心も一歩を譲るのではなかろうか。


【例句】

 北窓の雪さへあかり障子かな 重頼しげより

 小便の数もつもるや夜の雪 貞室ていしつ

 鴛鴦ゑんあうのかはらに降るやふすま雪 季吟きぎん

 下京しもぎやうや雪つむ上の夜の雨 凡兆ぼんちょう

 ながながと川一筋や雪の原 同

 雪空と鐘にしらるる夕べかな 西鶴

 馬をさへながむる雪のあしたかな 芭蕉

 いつものゐる石もなしけさの雪 言水ごんすい

 蝋燭のうすき匂ひや窓の雪 惟然いぜん

 鹿子かのこゆふ音きこゆなり夜の雪 同

 絵の中に居ルや山家の雪げしき 去来きょらい

 長々と横たふ雪のつつみかな 才麿さいまろ

 よし野山も唯大雪の夕哉 野水やすい

 我雪とおもへば軽し笠のうへ 其角きかく

 ふぐくうて其後そののち雪の降にけり 鬼貫おにつら

 狼の声そろふなり雪の暮 丈草じょうそう

 薄雪にひよどりの音や笹のそこ 支考しこう

 節々のおもひや竹に積る雪 同

 馬の尾に雪の花散る山路やまぢかな 同

 有明ありあけと気のつく雪のあかさ哉 浪化ろうか

 大窓に雪のあかるき湯殿かな 同

 夜の雪晴て藪木の光かな 同

 魚店うをだなに鰒の残るや雪げしき 呂風

 前髪に雪降りかかる鷹野かな 吏明

 鐘つきのおこしてゆくや雪の竹 也有やゆう

 雪の夜やひとり釣瓶つるべの落つる音 千代女ちよじょ

 声なくば鷺うしなはむ今朝の雪 同

 愚に耐よと窓をくらうす雪の竹 蕪村

 はこねや雪にこぼるる馬の汗 大江丸おおえまる

 うすうすと南天赤し今朝の雪 二柳じりゅう

 何をつる沖の小舟ぞ笠の雪 召波しょうは

 早瀬川見るほど雪の流れけり 大魯たいろ

 雪に腹すりてみぎは家鴨あひるかな 蝶夢ちょうむ

 恋猫の声ききそめつ雪月夜 几董きとう

 あざらけうを拾ひけりゆきの中 同

 物書きて鴨にかへけり夜の雪  菰堂

 山に雪ふるとて耳の鳴にけり 一茶

 どんど焼きどんどと雪の降りにけり  同

 心からしなのの雪に降られけり 同

 これがまあつひのすみかか雪五尺 同

 雪の日や物音遠き壁隣 吟江ぎんこう

 雪の野や道一すぢに鹿の跡 無隣

 雪の戸に立てかけておく箒哉 仏仙

 水青し土橋どばしの上に積る雪 夏目漱石

 古池のをしに雪降る夕かな 正岡子規

 いくたびも雪の深さを尋ねけり 同

 湯帰りやあらおもしろの雪景色 尾崎紅葉

 首綱でこうし引き来る深雪みゆきかな 河東碧梧桐

 雪空の拡がりゆくやうみの上 寺田寅彦

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