閉じる
表示設定
目次
所在なき身をたづねてや秋の風
【読み】
しよざいなきみをたづねてやあきのかぜ
【季語】
秋の風〈秋〉
【大意】
所在なさに苛まれているこの身をたずねて秋の風が吹くことである。
【附記】
秋風の肌寒さに存在の不安が募るのである。
【例歌】
君待つと我が恋ひをれば我が宿の簾（すだれ）動かし秋の風吹く 額田王（ぬかたのおおきみ）
うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも 大伴家持
秋風は身にしむばかり吹きにけり今や打つらむ妹（いも）がさごろも 藤原輔尹（ふじわらのすけただ）
夕されば野べの秋風身にしみて鶉（うづら）鳴くなり深草の里 藤原俊成（ふじらわのしゅんぜい）
秋風に堪へぬ草葉はうらがれてうづら鳴くなり小野の篠原 藤原定家
人すまぬ不破（ふは）の関屋の板廂（いたびさし）あれにしのちはただ秋の風 藤原良経（ふじわらのよしつね）
たそがれに物思（ものも）ひをれば我宿の荻（をぎ）の葉そよぎ秋風ぞ吹く 源実朝
暮かかる夕の空をながむればこだかき山に秋風ぞふく 同
白砂（しらさご）に穴掘る小蟹ささ走り千鳥も走り秋の風吹く 若山牧水
【例句】
あさ露や鬱金畠（うこんばたけ）の秋の風 凡兆（ぼんちょう）
秋風や藪（やぶ）も畠も不破の関 芭蕉
身にしみて大根からし秋の風 同
塚も動け我が泣く声は秋の風 同
あかあかと日は難面（つれなく）も秋の風 同
石山の石より白し秋の風 同
秋風や桐に動てつたの霜 同
物いへば唇寒し秋の風 同
がつくりとぬけ初（そめ）る歯や秋の風 杉風（さんぷう）
終宵（よもすがら）秋風聞くやうらの山 曽良（そら）
大豆の葉も裏吹くほどや秋の風 路通（ろつう）
秋風の心動きぬ縄すだれ 嵐雪（らんせつ）
蕣（あさがほ）の裏を見せけり風の秋 許六（きょりく）
十団子（とをだご）も小粒になりぬ秋の風 同
相撲場やあれにし後は秋の風 同
夕焼の百姓赤し秋の風 同
秋風の吹きわたりけり人の顔 鬼貫（おにつら）
秋風や心にかかる曽我の里 史邦（ふみくに）
秋風に吹れ次第の糸瓜（へちま）かな 浪化（ろうか）
はてはみなあふぎの骨や秋の風 乙由（おつゆう）
化野（あだしの）や蛇の衣（きぬ）ふく秋の風 野童（やどう）
蛛（くも）の囲（ゐ）のたるみ初（そめ）けり秋の風 素顰女（そひんじょ）
秋風の吹のこしてや鶏頭花 蕪村
秋風に白波つかむ鶚（みさご）かな 闌更（らんこう）
あぜ豆の黄ばみ初（そ）めけり秋の風 青蘿（せいら）
朝顔も実がちになりぬ秋の風 同
あきかぜや舟より舟へゆくからす 士朗（しろう）
松魚（かつを）むす浦のけぶりや秋の風 完来（かんらい）
尾上（をのへ）こす鴾（とき）の羽（は）あかし秋の風 長翠（ちょうすい）
脚高き机吹（ふく）也（なり）秋の風 東皐（とうこう）
秋風の隣ありけり墓二つ 内藤鳴雪
山畑や茄子笑み割るる秋の風 村上鬼城
日の入や秋風遠く鳴つて来る 夏目漱石
秋風や道に這ひ出るいもの蔓（つる） 河東碧梧桐
ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）
応援したユーザーはいません
応援する
アカウントをお持ちの方はログイン
カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。
新規ユーザー登録（無料）
カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック！
カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう！
応援すると応援コメントも書けます