さるすべりもみぢそめけり花ながら

【読み】

 さるすべりもみぢそめけりはなながら


【季語】

 もみづ(紅葉づ)〈秋〉


【語釈】

 そむ(初む)――動詞の連用形に付いて、……しはじめるの意を表す。[参考:デジタル大辞泉]


【大意】

 さるすべりの葉が色づきはじめたようである。花は枝に残りながら。


【附記】

「さるさべり(百日紅・百日白・猿滑)」は夏の季語だが、秋に入ってから咲いている時間のほうが長いと見える。それだけ花の期間が長い。


【例句】

 肌さむし竹きる山のうす紅葉 凡兆ぼんちょう

 河の紅葉ふみ分てなくかじかかな 西鶴さいかく

 波先に風も集るもみぢかな 野紅やこう

 蔦紅葉つたもみぢたぐるくりから峠かな 露川ろせん

 鹿鍋の下に焼かるる紅葉哉 同

 山姫のそめがら流す紅葉かな 其角きかく

 かつ散りて御簾みすに掃かるるもみぢかな 同

 柴舟に水上みなかみゆかし村紅葉 支考しこう

 花紅葉佐渡も見えたり浦の秋 同

 城外の鐘きこゆらんもみぢやま 同

 持網もちあみ白鮠しろはえふるふ紅葉かな 同

 村紅葉ちるや夕日の金ヶ崎 同

 紅葉やく人なとがめそ神の留守 同

 青々とうずまく淵や散る紅葉 木導もくどう

 砂川に紅葉を流す高雄かな 風国ふうこく

 音なしに流れ込んだる紅葉哉 りんじょ

 林間に仁王も酔ふてもみぢ哉 乙由おつゆう

 棹鹿さほしかの爪に紅さすもみぢかな 為有いゆう

 吹かへす鷲の羽風はかぜやつた紅葉 存義ぞんぎ

 山姫は谷を箪笥たんすのもみぢ哉 同

 犬ほえて家に人なし蔦紅葉 千代女ちよじょ

 色に出て竹も狂ふや蔦紅葉 同

 山くれて紅葉のあけをうばひけり 蕪村

 ひつじ田に紅葉ちりかかる夕日かな 同

 二荒ふたあらや紅葉が中の朱の橋 同

 さくらさへ紅葉しにけり鹿の声 同

 山里や煙斜に薄紅葉 闌更らんこう

 下紅葉かさねて雨のうつ夜哉 同

 霜にぬれてもみぢ葉かづく小雀こがら哉 暁台きょうたい

 暮れさむく紅葉に啼くや山がらす 白雄しらお

 山も川も谷もあらしの紅葉哉 青蘿せいら

 霜きえて酒の煙れる紅葉哉 同

 さながらに紅葉はぬれて朝月夜 几董きとう

 祭にも鐘つく村や柿紅葉 紫暁しぎょう

 柿紅葉遠く竹割るひびきかな 佳棠かとう

 下葉したばみな風となりゆくもみぢかな 完来かんらい

 ひよどりも来て悲しがる紅葉哉 成美せいび

 焼餅の窓のけぶりや梅紅葉 同

 すさまじや紅葉を染る露の音 道彦みちひこ

 夜神楽よかぐらや焚火の中へちる紅葉 一茶

 ちる紅葉いもが小鍋にかかるかな 同

 夕紅葉谷残虹のきえかかる 同

 橋ありて水なき川や夕紅葉 午心ごしん

 紅葉折る音ひと谷にひびきけり 梅室ばいしつ

 簗守やなもりが酒欲しがるや合歓紅葉ねぶもみぢ 柿麿

 畠から畠へはぜのもみぢかな 吾友

 岨道そばみちを横にかごく紅葉かな 内藤鳴雪

 神垣や紅葉をかざ巫女みこの袖 夏目漱石

 紅葉してしばし日の照る谷間かな 村上鬼城

 牛飼のわらべがかざす紅葉かな 同

 十里堤上櫨ことごと紅葉こうえふす 寺田寅彦

 金屏の紅葉に秋の夕日哉 同

 一村の柿紅葉して夕日哉 同

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