歯朶の葉を浸してすずし手水鉢

【読み】

 しだのはをひたしてすずしてうづばち


【季語】

 すずし(涼し)〈夏〉


【大意】

 シダの葉を浸して見るからに涼しい手水鉢である。


【附記】

 シダの漢字表記は現代なら「羊歯」が標準的であろうが往時の句には現れないようである。「歯朶」は新年の季語だが、ここでは涼しさに重点を置いているので夏の句とせねばなるまい。


【例句】

 むこ歯朶しだに餅おふうしの年 芭蕉

 国栖魚くずうをに日覆ふ歯朶の折葉しをりかな 言水ごんすい

 山柴にうら白まじるかまどかな 重五じゅうご

 春立つや歯朶にとどまる神矢の根 許六きょりく

 見せばやな餅の長櫃ながびつ歯朶入れて 才麿さいまろ

 裏白は東雲しののめ招くそよぎ哉 順也

 冬枯の歯朶にうつるや鳥の息 浪化ろうか

 さしがさに歯朶かかりけり恵方棚ゑはうだな 夕道せきどう

 花に来て歯朶かざり見る社哉 鈍可

 元日や動かぬ歯朶の影ぼママし 蓼太りょうた

 百姓たみくさや歯朶ゆひ添る牛の角 笛風てきふう

 蟋蟀こほろぎや一夜宿せし歯朶屏風 白雄しらお

 鬼歯朶も蘇鉄も雪のあしたかな 同

 開く日も裏白そよぐ氷室かな 梅室ばいしつ

 焼山やけやまの歯朶ぱちぱちと終夜よもすがら 内藤鳴雪

 裏白に和歌三神の灯影ほかげかな 佐々木北涯

 歯朶原を通つて行くや墓参 寺田寅彦

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