燃えつきたすがたも涼し人の顔

【読み】

 もえつきたすがたもすずしひとのかほ


【季語】

 涼し〈夏〉


【大意】

 燃えつきたすがたも涼しげな人の顔である。


【附記】

 古典的なボクシングの漫画を思い浮かべて詠んだ。


【例句】

 すずしさや水に柳の影法師 宗鑑そうかん

 すずしさや月ひるがへすぬり団扇うちは 祐甫ゆうほ

 行燈あんどんはきえて涼しきほたるかな 同

 崎風はすぐれて涼し五位の声 智月ちげつ

 夕立にやけ石涼し浅間山 素堂そどう

 裏見せて涼しき滝の心かな 芭蕉

 このあたり目に見ゆるものは皆涼し 同

 汐越しほごしや鶴はぎぬれて海涼し 同

 すずしさを絵にうつしけり嵯峨の竹 同

 松風の落葉か水の音涼し 同

 涼しかろやそせをこえてのりの舟 句空くくう

 すだれして涼しや宿のはひり口 荷兮かけい

 橋二つ満汐みちしほ涼し五大堂 桃隣とうりん

 涼しさや海老のはね出ス日の陰リ 惟然いぜん

 さらし着て小僧も涼しはつ真桑まくは 許六きょりく

 涼しさや簀子すのこの下の比良颪ひらおろし 同

 小仏をあつめて涼し浮御堂うきみだう 乙州おとくに

 行く雲の砕けて涼し磯の山 支考しこう

 けいせいの腹かけ涼し紐の色 木導もくどう

 内井ママの音も涼しやうをたな 同

 日覆の魚見せ涼しすしかざ 同

 麻の香のくるも涼しや寺の庭 北枝ほくし

 あら波やあれて涼しき入日影 史邦ふみくに

 藻の花に涼しき夢や蚊蜻蛉かとんばう 塵生

 見るほどの夢ぞ涼しき蚊帳かやの中 泥足でいそく

 涼しさや雲より落る宇治の川 諷竹ふうちく

 夕立や海を涼しく飛ぶいなご 亀柳

 涼しさや松の葉越しの破風造はふづくり 野明やめい

 涼しさや八人代の田の青み 荒雀こうじゃく

 月高く涼しき城の夜明かな 淡々たんたん

 耳に見て目にきく滝の音涼し 存義ぞんぎ

 涼しさに麦を月夜の卯兵衛哉 蕪村

 すずしさや都をたてにながれ川 同

 涼しさやともへながるる山の数 涼袋りょうたい

 あら涼し四十八湖を渡る風 闌更らんこえ

 欄干や風を枕に夢涼し 五明ごめい

 すずしさや板のあひから波がしら 蝶夢ちょうむ

 すずしさや絵島をひたす月の海 青蘿せいら

 月影の洩れて涼しや籠枕 利会

 涼しさや雀もしらぬ椎がもと 蒼虬そうきゅう

 夕涼ゆふすずや汁の実を釣る背戸の海 一茶

 朝皃あさがほに涼しくくふやひとり飯 同

 一尺の滝も涼しや心太ところてん 同

 涼しさや昼寐ひるねかほに青松葉 夏目漱石

 磯枕涼しといふもおろかなり 尾崎紅葉

 神垣の巌となりて浪涼し 同

 蝉涼しほほの広葉に風の吹く 河東碧梧桐

 蟹とればえびも手に飛ぶ涼しさよ 同

 上げ汐や涼しき風をのせて来る 寺田寅彦

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