5&6瞬目(終).

 一瞬。


「あの」


 声が聞こえる。


 起きそうになった。


 むりやり、自分を眠りのなかに引き戻す。


 どうしていいか、わかんないもん。好きだったひとに、大人の女性がいて。それに妹まで。


 眠らせて。もう起きたくない。


「起きないわね」


「エアコンのリモコンを貸してください」


 誰かの声が聞こえる。夢か。現実か。もうどうでもいいや。


「さむいっ」


 なんだ。寒い寒い。


「エアコンアタック」


「妹ぉ。どうしたぁ。姉はあなたのことで頭が」


 三人いる。


「うわあどうしようこれ。夢であってください」


 好きなひとと。


 好きなひとの隣にいた大人の女性と。


 妹がいる。


 私の部屋に。


「現実だよ」


 妹。エアコンのリモコンを操作している。部屋が普通の温度に戻った。


「ええと、その。こちらは、僕の、母です」


「はは」


「あなたに渡すプレゼントを一緒に見てもらいました。香水」


「こうすい」


「でも、それではだめだと聞いて、妹さんにも付き添ってもらって。買いました。髪留めです」


「かみどめ」


「プレゼントです。どうぞ」


「ありがとうございます」


「香水は、私がもらいました。その上で、姉さんにプレゼント。香水。使うときは私に言ってください。付けすぎはだめです」


「ありがとうございます」


「じゃあ、私と妹さんは部屋を出ますので。ごゆっくりどうぞ」


「はあ」


 ドアの閉まる音。


 部屋にふたり。私と、私の好きなひと。


「えっと、その。僕は」


 告白されるまで。


 あと。


 一瞬。


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一瞬 春嵐 @aiot3110

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