4瞬目.

 一瞬。


 姉の姿が、見えた。


「あ」


「ん?」


「姉に見られました」


「え、うそ」


「そうか。姉はここを通るのか。近道じゃなくて、ばか正直に大通りを」


「参ったな。これだと」


「ええ。あなたの恋愛観が間違って姉に伝わりますね」


「どうしよ」


「このまま買って、その足で姉の部屋に行けばよろしい」


「そう、ですか。すごい、なんというか、しっかりしてますね」


「あの姉あっての私なので。ばかがふたりいるわけにはいかない」


「いえ。そうじゃなくて、なんというか、似て、ますね。ふたりとも。信頼しあってる感じが」


「いえ」


「え?」


「私は姉に嫉妬しています」


「しっと?」


「やきもち焼いてるってことよ」


「そうなんだ」


「ごめんなさいね。私が海外行ってたせいで、この子、お父さん同様に女性の機微わからない子になっちゃって」


「いえ。私が姉に嫉妬してるのは、なんというか、その」


「あらあら。泣かないで」


「姉は。いい人なんです。エアコンだって」


「エアコン?」


「姉は。代謝が良くて。血のめぐりとかも良いので、暑かったり寒かったりが、他のひとより、感じやすいんです。なのに。エアコンを。妹の私のほうに付けろって」


「やさしいのね」


「やさしすぎるんです。だから、姉は。あなたが別のひとといたら。勝手にあきらめて、ひとりで、なくようなひとなんです。だから。だからおねがいします。姉を」


「わかりました。息子には告白してもらいます」


「ちょっと、かあさん。勝手に」


「それでいいわよね?」


「よろしくおねがいします」


「私は、あなたが小六の感性でいてくれてよかったと思ったわよ。その年で頭がよかったら、生きるの、大変でしょう?」


「いえ」


「私も、似たような子供時代だったから」


「かあさんは頭よかっただろうね」


「なんでも聞きに来なさい」


「ありがとう、ございます」


「そんなに良い姉さんなら、嫉妬して当然よ。嫉妬する自分を受け入れて、そのうえで、お姉さんのために何ができるか、一緒に考えましょう」


「ありがとうございます」


「かあさんが、なんか、かあさんしてる」


「そもそもあなたが私と歩くことを言ってないのがわるいのよ」


「いや、この年でかあさんと街を歩くって好きなひとに言うか普通」

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