第3話 「対面」

「今度何処かで御会いする事って出来ますか?」


唐突な一言で少し吃驚したが、直ぐに状況を飲み込んだ私は少し考えた後、彼のお誘いを承諾した。


場所は鋭蒼駅前、時間は十時三十分、私が駆け付けた頃にはもう彼は、否、彼女は居た。優しくて私の事を気に掛けてくれる画面越しの彼(女)にときめいていた私からしたら迚も驚きだった。ショートボブに無難な服装、其処等の人より少し美人な女性だった。


名前を、「海美(うみ)」と云った。

二人で少し自己紹介を終えると、軽い食事を摂る為、場所を移した。実際に面を向けて話すとなると変に恥ずかしくて、勇気が出なかった。其れをカバーするかの様に、海美さんから話題を振ってくれた。其れから私は色色な想いを改めて打ち明けた。


長い間、真剣な眼差しで話を聞いてくれて、其れに対して意見も述べてくれて、何処か身体が軽くなった様な気がした。樂しい時間程速く過ぎて行く此の感覚を久久に憶えた。日の入りを始めた頃、感謝の気持を伝え、海美さんと別れた。


家に帰ると何等変りない様な気もしたが、少し視野が広くなった気がした。また変り映えの無い日日が続くが、明日を深く考えなくなった。此れも海美さんの御陰なのか。


職場では褒められる事も多くなり、次第に元気が出てきた。只、私は彼奴からの嫉視を感じ取れて止まなかった。

私は其れに恐怖を憶えた。

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針と海 ツキミ/月見 @_2ki3_

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