傷跡と野良猫

ほかほかおにぎり

第1話

パタン、とドアを閉めると開いた窓からふわりと花の香りが舞ってきた。風通しの良い部屋に心を踊らせて部屋に入ると、大量の段ボールが目に入った。幾重にも積み上げられた段ボールは、落ち着ける場所を探すのにも少し苦労するぐらい部屋を埋めつくしていた。自分の持っている物なんて大して多くはないと思っていたけれど、こうして目の前にするとこんなに沢山の物と今まで生活してきたのか、と軽く目眩がする。

23歳、私の初めての一人暮らしだ。既に仕事を見つけていた私は、職場に近いという理由と、そろそろ自立をしなければいけないという理由で、比較的安いアパートを借りて住んでいた場所から飛び出してきた。まだここに居ればいい、と母は優しく引き止めてくれたけれど、もう10年以上も世話をしてくれた人にこれ以上迷惑をかけるのも申し訳なかったのだ。

1人になるというのは不安ではあったけれど、どこか気持ちが落ち着く部分もあった。窓の外を見ると、昼間の光に照らされた呑気な街で、何人かの人が忙しく歩いているのを見かけた。小さい時に比べて、少し世界が狭く見えるようになったのは、私が成長したからなのだろう。私は、積まれた段ボールの横で軽く横になった。



アパートの薄い壁を隔てた横の部屋、私の隣には、園宮さんという男の人が住んでいる。彼は、私が引越してくるよりもずっと前からこのアパートに住んでいたそうだ。園宮さんは、恐らく私と同じぐらいの歳だが、まるで子供みたいにおっとりとして優しい佇まいをしている。昼間はよく日向ぼっこをしており、アパートの横にある公園でぼうっとしているのをよく見かける。ゆったりとした服装と、微睡んだように虚ろな目のせいで、彼はいつも寝ぼけているように見えた。

私が、園宮さんと出会ったのはちょうど私が引っ越してきた日だった。


引越し初日、食べ物を持ってきていなかった私は、その晩のご飯の材料を買おうとして外に出ると、ドアの前で一匹の猫と出くわした。最初はやや困惑したけれど、一瞬してから野良猫だろうと安心した。その白い毛並みと茶色い瞳は、上品さすら感じさせた。ふと、その猫と目が合うと、少し間を置いて気だるそうな鳴き声を出した。その鳴き声から察するにおそらく、引越してきたばかりの私を歓迎してくれていたのだろう。

「ミサ、ダメじゃないか。勝手に飛び出しちゃ。」

私が猫に気を取られていると、不意におっとりとした声が聞こえてきた。声の主は、隣の部屋のドアから出てきて、猫を抱き上げた。その後、彼は私に気付いて優しい顔で話しかけた。

「はじめまして。今日引っ越してきた方ですかね? 僕、隣に住んでいる園宮と申します。よろしくお願いします。」

「わ、私は美雪と申します。この土地は初めてで、いまいち分からないことも多いですけど、ぜひよろしくお願いします。」

「えぇ。この辺りは自然も多いですからね。何かと不便なこともありますけど、心は安らぎますよ。」

園宮さんの声は、話している私を安心させる効果でもあるかのように感じた。

「ありがとうございます。ところで、その猫は園宮さんが飼っている猫ですか? 」

「飼っている……? えぇ、まぁそうですね。」

一瞬、怪訝そうな顔が覗いた。おそらく、普段はあまり一緒にいないから、飼っているという認識ではないのだろうと思った。しかし、何日かこのアパートで生活しているうちに、私のその予想は外れているとわかった。


園宮さんは、ミサと呼ばれたその猫と常に一緒だった。公園にいる時も、外に出掛ける時も、家の中に入る時も、常に一緒だった。園宮さんは、時々家族のようにミサに語り掛けていた。普段よりも穏やかな表情と、包み込むような声で。ミサは、言葉こそ発せないものの、園宮さんの話は全部聞いているという風に落ち着いて佇み、ふとした時には相槌のようなものも見せていた。園宮さんとミサの間には、言葉を超えた2人だけの合図のようなものが存在しているようにも見えた。



引っ越してきておよそ3日、私の部屋から段ボールはほぼ消え、見慣れた生活の気配がそこにはあった。生活に必要なものしかないこの部屋の荷物でさえ、段ボールにするとあの量なのだ。沢山のものに生かされている、改めて私は実感した。部屋の片付けをようやく終わらせた私は、大きく伸びをしてから母に電話をかけた。母、と言っても私の実の母親ではない。孤児院で私を育ててくれた育ての母だ。


幸恵さんとのいちばん古い思い出は、恐らく10歳になってすぐのことだった。ずいぶんしっかりした子ねぇ、と幸恵さんが優しく頭を撫でてくれたのを覚えている。私には、10歳になるよりも前の記憶が無い。気が付いたら、私は孤児院にいて幸恵さん達と一緒に暮らしていた。もう子供でもなかった私は、そこが親の居ない人達の預けられる場所であることに気が付いていた。幸恵さんは、私を本当の母親だと思って欲しい、と言ってくれたけれど、それは私への愛情ではなく仕事として言ってくれているということにも。だから、幸恵さんや他の施設のスタッフの人に迷惑をかけないようにするため、私は極力自分に出来ることは一人でやった。最初は、食器洗いや洗濯物干し、少し慣れてからは他の子供に料理を配膳したり、絵本の読み聞かせなども頼まれるようになった。手伝いをすることで、少なくとも自分は迷惑な存在ではないと自覚することができた。


「もしもし……あら、美雪ちゃん? 大丈夫? ちゃんとご飯食べてる? 」

少しして、幸恵さんと電話が繋がった。まだ孤児院を出てから3日なのに、幸恵さんの声をひどく懐かしく感じた。

「もう、幸恵さんはお節介だなぁ。もう二十歳もすぎたんだよ? 私は大丈夫。」

「それなら良かったわぁ。まぁ確かに、美雪ちゃんに限って心配な事なんてないけどね。それで、今日はどうかしたの? 」

「いや、別にどうってことは無いんだけどさ。片付けも終わらせて、ちゃんと部屋っぽくなったからさ。その、報告で電話かけてみただけ。」

「さすが美雪ちゃんねぇ。やっぱりしっかりしてるわ。なんかあったら、またすぐ連絡するのよ。」

「うん、分かった。ありがとう。」

これを最後に、私はしばらく幸恵さんには電話をかけないようにしようと決めていた。ここから、真の自立を始めるのだ。



アパートでの生活を続けるうちに、園宮さんのことに関して、いくつか不思議なことがあると気が付いた。園宮さんは、 おそらく仕事をしていない。かと言って、家族や友人と一緒に生活している訳でも無い。いつも、ミサと一緒にゆっくりしているだけだ。どうやって生活をしているのかがよく分からなかった。

そして、何より気になったのはそのミサのことだった。


ある日、朝方に仕事から帰ってきた私は、疲れてそのまま寝ようと思いながらふらふらと家に帰っていた。アパートの近くまで来た私は、公園のブランコに乗って泣いている園宮さんを見つけた。陽もまだ登っておらず、人ひとり居ない公園で、園宮さんの背中は悲愴を持って丸まっていた。私は、園宮さんに見つからないように遠くから彼を眺めた。彼に話しかけるのを躊躇った理由は、その背中が持つ悲愴のせいではなく、泣いている園宮さんがミサを抱いていたことだった。嗚咽を漏らしながら泣く園宮さんは、ミサを強く抱き締めながら、時々小さい声でぽつりぽつりと言葉を流していた。


これが、園宮さんのいちばん不思議なところだった。普段は人当たりのいい園宮さんだが、ミサに対してだけは、泣いたり、本当に楽しそうに笑ったり、まるで別人のように感情的になるのだ。彼は、ミサを命綱にして何とか生きている。そんな虚無を抱えて生きているように私の目には映った。



14歳の頃、私はすっかり孤児院の中で1番の年長になっていた。私以外の子供は、だいたい10歳になるまでに里親が見つかるか、時には実の親が迎えに来ることもあった。しかし、入所時に既に10歳だった私に里親が来ることは無く、実の親の顔も知らないため、孤児院を出るつての無かった私は、そこを本当の家として頼りながら成長していった。成長していくに連れ、私の体は子供のものから大人のものへ、みるみるうちに変わっていき、突如殻が破けて外を見た鳥の雛のように不安定な状態になった。一番辛かったのは、初潮が来た時だった。当時、まともに教育を受けていなかった私は、自分の体のことすらよく理解できていなかったのだ。ただ訪れる自分の体の変化が、気持ち悪くて仕方がなかった。なにより幸恵さん達には、ただでさえ迷惑をかけていたのに、成長と共にさらに苦労をかけてしまうこととなり、心から申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

その代わりとして、私は自分に出来ることを精一杯こなした。他の孤児の面倒を見るのは当たり前だし、特別な許可を得て厨房への立ち入りも許可されてからは、子供たちのために料理を作ることもあった。


14歳の初夏の日。あの日も、いつもと同じように子供たちともう1人の施設の人と一緒に私は公園に居た。子供を遠くから見つめながら、時には一緒に遊びながら、年長として私なりに彼らを見守っていた。そのうち、少しトイレに行きたくなった私は、施設の人に行って近くのトイレを探した。しかし、その公園の辺りにトイレはあまり無く、私は少し遠くまで探すために暗がりの細道に入った。夏にしては陽射しが少なく、少しジメジメした細道だった。あまり通りたくは無い道だったけれど、遠くの方を探すにはそこを抜けて公園を出るしか無かった。その道を少し歩くと、暗がりの向こうに、眩しい程の陽射しを見つけ、私はその向こうに歩いて行こうとした。

しかし、私はその細道から出られなかった。突如、背後から無理やり口を塞がれたのだ。あまりにも突然のことだった、

私はどうすることも出来ず、相手の顔を見ることも出来なかった。最初のうちは、その腕の拘束から抜けるために抵抗をしていたけれど、その腕の中で次第に私の腕、足、そして全身から力が抜けていき、目の前の景色も遠くへ霞んでいった。

その先のことは、よく覚えていない。混濁した意識の中で、汗では無い誰かの湿り気が体にべっとりと残っていたこと、知らない人の叫び声がしたこと、意識を取り戻した私を幸恵さんが泣きながら強く抱き締めてくれたこと。そういう断片的な記憶だけが私の中には残っていた。その出来事があってから、幸恵さんが私をひとりで外に出してくれることは減っていった。

そして、その日から、私の頭の中に、全く記憶のない父親の存在が、なぜか強く意識されるようになった。


「あ。」

家に戻ってきた私は、冷蔵庫の中に野菜が大量にあることに気が付いた。しまった、そう思った。一昨日、私の家には幸恵さんから仕送りとして野菜が届いていたのだ。自立したいから仕送りのお金はいらない、と孤児院を出る前から伝えていたはずだったのに、抜け道でも見つけたかのように幸恵さんはよく野菜を届けてくれるのだ。野菜の入った段ボールには、「厨房で余りすぎたから食べていって! 」とメモ書きが入っていた。私の気を遣わせないようにしているのも、実にあの人らしい。

しかし、これは困ったことになった。幸恵さんの仕送りがあることを忘れていた私は、しばらく買い出ししなくて済むようにと、大量の野菜を買い込んでしまったのだ。このあまりある食材をどうしようかと考えた時、私の頭にふと園宮さんの姿が浮かんだ。


「……はい、どなたですか? 」

「あ、隣に住んでる美雪です。」

「あぁ、美雪さんですか。どうされたんですか? こんな夕方に。」

「実は、夕飯の食材が大量に余ってしまっていて……よろしければ、園宮さんに食べて頂けないかと思って。」

そこで、インターホンの会話は途切れ、ドアが開いて園宮さんが出てきた。チェックのシャツをゆるく着こなした園宮さんは、普段よりもうつろな雰囲気に見えた。そんな園宮さんの腕の中には、ミサがいた。

「ありがとうございます。なんか、隣人っぽくていいですね、そういうの。」

園宮さんの悪戯っぽい笑みを見て、なんだか心が温まった。

「あの……もし良ければ、私の家で食べません? 私、ひとりなので。」

私の咄嗟の思い付きに、園宮さんは一瞬キョトンとした顔になったが、すぐに返事をしてくれた。

「えぇ、もちろん。なら、僕も何か持っていきましょうか? お酒とか。」

「ありがとうございます、助かります」

「じゃあ、少し準備したらすぐ行きますね。ちょっと部屋で待っててください。」

園宮さんは、暖かくそう言ってドアを閉めようとしたが、少しためらって申し訳なさそうな顔を向けてきた。

「あ、その……ミサも連れて行っていいですか? 」


ぐつぐつと煮える鍋を真ん中に、私達は小さく乾杯をした。園宮さんの膝の上では、ミサがうとうとと眠そうな顔をしている。

園宮さんは、その子供っぽい見た目に反してかなりお酒に強かった。私がコップに移し替えたビールを1杯飲む頃には、園宮さんは既に缶を2本開けていた。

「昔、馬鹿みたいにお酒を飲んでた時期がありましてね。おかげで、お酒には強いんです。」

そう言う園宮さんの顔は、少し赤く火照っていた。お酒の入った園宮さんは、いつもより少し明るく、よく話した。もちろん、ミサと話している時ほどではないが。

「そう言えば、美雪さんは昼間にもよくアパートにいますよね。」

「えぇ、仕事があるのが夜なもので。」

「へぇ、そうなんですか。そんな働けて、すごいものですよ。」

私は、普段は聞けなかったことを話の流れと少しの酩酊に後押しされて聞いてみた。

「そういえば、園宮さんはお仕事されてないんですか? 」

「僕ですか? 僕はあいにく、していないんです。贅沢には興味無いですし、それにほそぼそと生活出来るだけの伝手はありますから。ミサとのんびり出来れば、それでいいんです。」

楽しそうに話す瞳の奥には、どこか寂しげな憂いが見えた。これ以上は追求してはいけない、そんな気がした。

「まぁ、要するにニートです。美雪さんみたいに頑張って働けている人を見ると羨ましくなりますよ。」

園宮さんはため息混じりに自嘲しながら、私のグラスにお酒を注いでくれた。

その日から、私達はよく食事を共にするようになった。そして、次第に食事のペースは増えていき、気が付けば仕事がない日の食事は、私のひとつの楽しみになっていった。



夜が街を覆う頃、私の仕事は始まる。電車の車窓から外を見やれば、既に薄い明かりと共に街は眠り支度を整えている。しかし、私の降りる駅は眠ることを知らない。人工の光に包まれて、いつまでも光り輝いている。

私は、眩いほどの文明の光を浴びて夜の街を歩く。くたびれたサラリーマン、叱責を垂れる中年、装飾品に身を包んだ老婆、幾重もの人をすり抜け、私は小さなバーに入る。

そのバーは、オレンジの光と少しレトロな雰囲気で満たされている。店長に軽い会釈をして、私はバックヤードへ入り、化粧とドレスで夜の姿に着替える。隣には、私よりも派手に化粧をした水色のドレスの同僚がいた。

オープンの合図と共に、店には50代過ぎの男性が覚束無い足取りでやって来る。そして、彼らが席に座ったのを見計らって、私達はその隣に座る。そうして笑顔で酒を注ぐのだ。この笑顔までが、夜化粧の一環である。私たちの姿を認めた男性は、まるで幼児のように泣き出し、私の胸に顔を埋める。彼らもまた、夜の姿を持っているのだ。


私の仕事は、平たく言えば水商売である。若さを売り物にした安っぽい商売、と揶揄する人も居るが、実際のところはそんな簡単な仕事ではない。彼らの人生に干渉し過ぎない程度に寄り添い、言葉と体ひとつで彼らの心を満たすのだ。到底、普通の人間に務まる仕事ではない。しかし、幼い頃から周りの様子を伺って生きてきた私にとっては、まさに天職でもあった。

ここの店にやってくる人々は、年齢も性別もバラバラだけれど、ひとつだけ、心に愛の空白を持っているという大きな共通点がある。そして、その空白を埋めるのが私たちの仕事なのだ。

幸恵さん達は、私がここで働いていることを知らない。心配をかけない様、都会の方で仕事を見つけてきた、とだけ伝えたが、ろくに中学校すら出ていない私に都会で出来る真っ当な仕事などあるはずもない。しかし、だからと言って私はこの仕事を仕方なく選んだ訳では無い。むしろ、自分から進んでこの仕事を選んだのだ。元々、両親からの愛なしで育ったという巨大な空白を抱えていた私は、客の空白が手に取るように分かるため、容易に、かつ正確に彼らに愛を注ぐことができる。これは仕事であり、使命であると私は感じていた。



仕事も園宮さんとの食事もない休日は、いつものんびりと狭いアパートで体をいっぱいに広げて過ごしている。私の仕事は主に夜に入っているせいか、この辺りの人と生活のリズムが合わないため、近所で働いている人との繋がりも出来ないのだ。繋がれる人といえば、このアパートの管理人のおばあちゃんか、働かずにずっとアパートの辺りにいる園宮さんぐらいだ。


その日も、長い眠りから覚めて、知らぬ間に昼間になった街を見下ろした私は、だぼっとしたパジャマ姿のままで外に散歩へ出掛けようとした。意識半分のままドアを開けると、そこには、ミサが居た。

「ミサ〜、おはよう。今日も可愛いね〜。」

私は寝ぼけ眼でミサを撫でた。最近ではミサも私の顔を覚えてくれたみたいで、撫でるといつもゴロゴロと鳴くようになってくれた。

しかし、今日は違った。ミサは、私が撫でようとするなり大声で鳴いた。その鳴き声の大きさに私はひどく驚き、体がほぼ完全に目覚めた。今日のミサは、どこか必死になって鳴いている。

「ミサ…? 」

私は、ミサの態度を少し不審に思った。そうしているうちに、ミサは園宮さんの部屋の方へ駆けて行った。

そして、ドアの向こうをじっと見つめていた。私は嫌な予感がして、ドアを思いっきり開けて園宮さんの部屋に押し入った。その瞬間、園宮さんのものであろう大きな咳が聞こえた。内臓まで出てきてしまうのではないかと思うぐらい、激しい咳だった。

「園宮さんっ! 」

部屋に入った私は、倒れている園宮さんの影を見つけた。私は、園宮さんの肩を持って布団の方まで連れて行こうとした。すると、園宮さんはようやく私に気が付いた。

「あぁ……美雪ちゃん。どうして、僕の部屋に? 」

「ミサが、教えてくれたの。園宮さんが、危ないって。」

「そっか……ミサが……。」

重い肩を持ちながら、私は園宮さんを布団まで運んだ。少し痩せたようにも見える園宮さんの顔は、昼の光を浴びて、普段よりも儚げに見えた。

そういえば、園宮さんを私の部屋に上げたのは何回もあったが、私が園宮さんの部屋に入るのは初めてだった。少し見渡すと、きちんと整えられた部屋に、お酒と錠剤のゴミが所々散らばっているのが分かった。そして、タンスの上に、ひとつの写真を見つけた。

私は、ほとんど無意識にその写真を手に取っていた。そこには──園宮さんと、ひとりの女性が写っていた。

写真は、少し頬を赤らめた園宮さんと女性が紅葉をバックにして写っているものだった。園宮さんの年齢は今より5歳ほど若く、写っている女性の年齢もだいたい同じだった。

「……美沙。」

園宮さんが、小さく声を震わせた。彼が発した名前は「ミサ」を呼んでいるわけではなかった。

「僕、3年ぐらい前から体が弱いんですよ……。もう大体治ったはずなんですけど、たまに発作が起こってこうなるんです……。まぁおかげで障害者として社会から扱われて、保障を受けて生きていけるんですけどね。」

園宮さんは、重い体を布団から引き上げた。そして、私に過去の話をしてくれた。


確か、今からちょうど6年ぐらい前ですかね。僕が大学に入ってすぐの頃、サークルを迷ってウロウロしていた僕は、美沙という女性に出会ったんです。彼女は明るくて、僕と同じで大学に入ったばかりだったのに友達も多くて、まさに天真爛漫といった風でした。おまけに彼女は美人で、生まれた時から神様に愛されていた、そんな人でした。

彼女と出会ったきっかけは、大したものでもありません。大学でたまたま一緒の講義を受けていて、その講義が終わった後に、彼女が大学までの定期を忘れていったんです。見ないふりをして帰るか、大学に届けるか、色々な選択肢はありましたが、僕は講義室から出る彼女を追いかけ、直接渡しました。僕、かなり人見知りなんですよ。しかも相手は僕が知ってる限りでは一番の美人、世界の中心みたいな人です。どうしてそんな思い切った行動が出来たのか、今でもよく分かりません。当然緊張して、まともに喋るなんてままならない状態でした。すると彼女は、今まで見た中でもとびきりの笑顔を見せて、僕の手を掴んだんです。ありがとう、君が居なかったら私帰れなかった、って。それから彼女は、お礼だと言って僕を引っ張って彼女お気に入りのレストランに連れて行ってくれたんです。彼女はお礼になにか奢るよ、と言ってくれましたが、流石に女性に奢らせるのは男としてどうなんだ、という旨のことを伝えました。それでも彼女は、何とかお礼をしたいと食い下がったので、仕方なく僕の頼んだオムライス代の半分を払って貰いました。ちょっと不満げな、でも楽しそうな彼女の顔と、やけに緊張しながら食べたふわふわのオムライスの味は、忘れられません。

まだ半分しかお礼してないから。それからも、彼女はそう言って僕と色んな場所に出かけていきました。彼女の連れて行く場所は、どこも輝きに満ちていて、今まで通り生きていたら出会えない風景ばかりでした。僕は、彼女と見られるそんな風景に心を踊らせると同時に、彼女の貴重な大学生活を僕なんかと一緒に過ごしていいのか、とふと心配にもなりました。

秋も深まったある日、僕達は紅葉を見に行きました。この頃には既に、お礼は関係なく2人でよく遊びに行くようになっていました。僕は、その日のことを忘れません。美沙の様子が、少し変だったのです。何だか普段よりも会話のペースが合わないというか、ぎこちないというか、そんな感じでした。そして陽が落ちて、帰ろうかという話になった時、彼女は、僕を引き止めました。その時の顔は、何故か普段よりも遥かに綺麗でした。そして、少し長めの沈黙を破って美沙は、僕に、告白をしたんです。僕は、嬉しくて、でも初めての経験で、どうしていいか分からなかったんですが、彼女の告白を受け入れました。その日から、僕達は恋人になりました。

別に、恋人になったからと言ってなにか特別なことをした訳ではありませんでした。でも、友達として遊んでた時とは明らかに違う甘い幸せがあったのは確かです。彼女の声ひとつで、彼女の動きひとつで、僕の日常は驚くほど色付いていきました。彼女の中で、僕が特別な存在であるということだけはやはり信じられなくて、どこか照れる部分もありました。

でも、そんな日常は長くは続きませんでした。美沙が、突然居なくなったのです。あまりにも、突然のことでした。僕が一緒に居なかった時のことです。彼女の周囲の人、家族までもがそれは交通事故だと言いました。でもそんなの有り得ないんです! 彼女のような未来ある明るい人が、交通事故なんかで死ぬなんて、ありえないんです……。第一、葬式に出ているうちの誰も事故の瞬間を見ていないのに、どうして彼女の死を信じられるんですか。僕は、勝手に執り行われる葬式に、参列しませんでした。彼女の家族は、僕のことを知っていて、呼んでくれました。でも、出ませんでした。彼女は、どこかへ行っただけなのです。どこかで迷子になってるだけなんです。いつか、帰って、来るんです。

その日から、僕は埋めきれない空白を、酒で埋めました。僕は酒に弱くて、元々そんなに飲めるわけではなかったのですが、それでも、強い刺激で脳を麻痺させていないと、美沙が死んだと言う恐ろしい幻想がふっと浮かんでしまうんです。飲んで、飲んで、吐いて、僕は倒れました。恥ずかしい話ですが、ひとり暮らしで大学に通っていた僕が倒れてるのに気付いてくれる人なんか、美沙以外にまず居ませんでした。結局、僕が倒れているのに気付いたのは、当時住んでたアパートの大家さんでした。倒れてから、丸1日が経っていた時のことです。

病院の検査で僕は、過度の飲酒と生活の乱れによって神経がやられている、と言われました。元々病弱だった僕は、堕ちていった生活の底で更に壊れていっていました。それから、薬も処方されて、何とか普段の生活に戻れましたが、美沙が消えたショックは僕の中で残り続けました。

そんなある日のことでした。晴れた空の下、僕が外に出た時、出会ったのがミサでした。はじめに見た彼女は、ただの猫でした。でも、道で出会った時、彼女は僕の足元にすり寄って、暖かい、満足そうな顔をしていたのです。その猫を見て、僕は不思議と美沙が帰ってきたと実感したのです。なんの確証もありません。ただ、彼女の目が美沙そのものだったのです。美沙は死んでなんかいません。天真爛漫だった彼女は、のびのびとした猫に姿を変えて、僕の前に戻ってきてくれたのです。それから、このアパートで、僕とミサは生活を始めました。今までのように言葉じゃない、彼女の発する沢山のメッセージを受け取り、僕は彼女を慈しみました。これまで返せなかった恩を、丁寧に返すように。


「そして、今でもその恩返しは続いているんです。」

いつの間に、ミサは園宮さんの体の上にちょこんと乗っていた。園宮さんはミサの体を優しく撫で、抱きしめ、そして泣き出しました。

「美雪さん。」

半分、声に涙を残したまま園宮さんは私を呼んだ。

「今日は、出て行って下さい。そして、もう、僕に、近付かないで下さい……。」

語調は震えていたが、最後の言葉はハッキリと明確な意志と共に伝わった。



部屋に戻った私は、軽いめまいと共に横になった。園宮さんの過去。私は園宮さんのことを、何も知らなかった。あんなに一緒に居たのに、私は園宮さんの心にひとつも寄り添えなかった。私の部屋には、空虚が横たわっていた。

園宮さんに、来ないでくれと言われてからようやく気付いたことがある。私は、園宮さんのいる生活を心の軸にして寄りかかっていたのだということに。ひとり暮らしの孤独を、園宮さんに寄り掛かることで気が付かないふりをしていたことに。

重い体を引き上げ、私は部屋の端に追いやられた段ボールに手を入れた。そこには、一枚の写真があった。6歳の私が、ゴミのような部屋の中でアザだらけになっている写真だった。どうして、こんな写真を私はこの部屋に持ってきてしまったのだろうか。

園宮さんの話のおかげで、私は、触れたくなかった禁忌に向き合う覚悟が決まった。



それは、私が大体16歳になる頃だった。その頃の私には、また体に変化が起こっていた。私の意思に反して、胸はだんだん大きくなっていき、恥ずかしかったけれど施設の人と一緒に下着を買いに行くようにもなった。生理の度に体調が崩れ、機嫌が悪くなる私に、幸恵さん達は優しく接してくれた。

しかし、私は幸恵さんの態度が少しよそよそしくなっていることにも気付いていた。この頃にはもう、人の態度には敏感だった。何かを隠している、そのことに気が付いていた。


そして、とうとうその日は訪れた。私の17歳の誕生日の日だった。

あの孤児院では、子供が誕生日を迎える度にパーティを行うのだ。そしてそれは私も例外ではなく、もういい歳だからと私が言っても、施設の人は、いつものお礼だから、と無理にでも毎年祝ってくれた。

その日も、慕ってくれる子供達からもお祝いをされて楽しいパーティは幕を閉じた。みんなが部屋に戻ったあと、私が施設の人と片付けをしていると、神妙な顔をした幸恵さんが近付いてきた。

「……ねぇ、美雪ちゃん。ちょっといい? 」

「はい、何でしょう? 」

「えっと……少し話しにくい内容だから、奥の部屋で話しましょう」

幸恵さんに促されるまま、私達は施設の人の事務室のような場所で2人っきりになった。今日の幸恵さんは、何だかいつにも増して緊張した面持ちだった。

「本当はね、もっと早く言わなきゃいけないと思ってたんだけどね……。」

「幸恵さん、どうしたんですか。そんな顔して。」

私は、空気を変えるためにあえて調子外れに明るく声をかけた。それでも、幸恵さんの様子は変わらなかった。

「美雪ちゃん、今から話す内容は、美雪ちゃんにとってあまり聞きたくない内容かもしれないけど……美雪ちゃんももう17歳になって、これから成人もして、いずれここを出ていくわけでしょう? 私が言っていいことかは分からないけど、美雪ちゃんは、本当に立派に成長してくれたわ。だからこそ、美雪ちゃんには知っておいて欲しいの。」

幸恵さんは、そこで躊躇うように一呼吸を置いた。

「……あなたの、両親のことを。」

私は、もう明るくすることを忘れてしまっていた。幸恵さんは、震えた手で一枚の写真を取り出して、私に渡した。それは、私がアパートに持っていった例の写真だった。そのショッキングな写真を見て、それが私だと知った時、軽い吐き気を催した。そして、幸恵さんは話を始めた。


私が、あなたと出会ったのはあなたが8歳になった時だったわ。と言っても、あなたは覚えてないでしょうけどね。その頃のあなたは、言葉もまともに喋れなくて、話し掛けようとしても私に引っ掻いたり、噛み付いたりして来たのよ。

最初に警察の人からこの子供を保護してくれないか、と言われた時は沢山の子供を見てきた私も流石に緊張したわ。もう8歳にもなるのに、言葉も行動も、まるで幼児のようだったのだから。

でも、警察の人からその写真を渡されて詳しい話を聞いた時、私は納得したわ。……いい? ここから、覚悟して聞いてちょうだいね。

あなたは、幼い頃から父親に暴行を加えられていたの。


元々、あなたの家庭は両親とあなたの3人で暮らしていたの。けれど、あなたのお父さんの務めていた会社が倒産してから、少ない手切れ金と周囲の冷たい目のストレスに耐えかねたお父さんは、お母さんに暴力を振るうようになったの。暴力を振るったかと思えば、ふと我に返ったようにお母さんを抱きしめて、そして肝心のお母さんはと言えば、まともに食事も作れず、お父さんの暴力にどんどん衰弱していって……あなたは、そんな両親が壊れていく様子を全て見ていたの。

そして、あなたが6歳になった頃、あなたのお母さんは、あなたひとり残して、家を出ていった。その後は……そう。あなたが、お父さんの暴力の的になったの。ろくな食事も与えられず、会社に行く訳でもないお父さんの暴力を毎日、一日中受けていたの。そして……ただ殴るだけでは飽きたらなくなったお父さんは……あなたを……ごめんなさい、これは話したくないわ。

そして、あなたが8歳になる少し前、近所の人が「あの家の様子がおかしい」と通報してくれたおかげで警察が動いて、あなたの父親は逮捕されたの。その時に見つかったあなたは、肋骨の形が浮き上がるほど肉は無く、アザだらけで、服を着ていない状態で見つかったの。栄養失調だったらしいわ。そして、警察の保護を受けて何とか人並みの体に戻った状態で、あなたはこの孤児院にやって来たのよ。


「……嫌な話だと思うけど、これがあなたの過去なのよ。出来れば、ずっと話さずにいようと思ったのだけど、あなたがどんどん成長して大人になっていく様子を見ていると……子供の頃の記憶が無いことを不審に思うようになるんじゃないかと思って……」

幸恵さんは、自分のことでもないのにせぐりあげるような口調になっていた。

これが、私の過去。記憶の空白。その瞬間、私の脳裏におぞましい光景がよぎった。

未熟な私の体を何度も触り、舐め続ける影。叫び声が出せないように、ゴミで口を塞いだ状態で私に体を擦り付ける影。意識が混濁している中、私の服を脱がせる影。

全てが、繋がった。私がショックを受けて忘れていた生まれてからの10年間と、そして、14歳の時に起こった出来事の正体を。

これが、私の、過去。幸恵さんの話を聞いた後、私は襲い来る過去のショックのせいで、その場で倒れてしまったらしい。

それ以降、幸恵さんがその話題を出すことはなく、その写真は私が預かったまま、この日にまで至った。


外を覗くと、そこはすっかり夜になっていた。私は、その写真を強く握り締めた。私の過去。園宮さんの過去。美沙さんの過去。お父さんの過去。

街を見下ろして私が出した答えは、至って単純なものだった。



翌日、その日の夜は私は仕事だった。しかし、私は急に体調を崩したと言って、仕事を休んだ。もちろん、嘘である。嘘をついてまで仕事を休んだのは、初めてのことだった。今日は、それよりも重大な用事があったのだ。2人の人間の、人生に関わる大きな用事が。


夜が、更けた。街にはパラパラと明かりが灯っている。私は、園宮さんの部屋の前に立っていた。そして、深い呼吸を3つして、私はドアを開けた。そして、自分に出来る最高の笑顔を見せた。

「園宮さん! 鍋、持ってきました。一緒に食べましょう! 」

園宮さんは、部屋の奥でミサを撫でながら憔悴しきった顔をしていた。少しして、ゆっくりと首を向けて私に気付くと、鋭い視線を向けてきた。痩せこけた頬のせいで、脅迫しているようにも、どこか寂しそうにしているようにも見える視線だった。

「来ないでと、言ったはずです……。」

「でも来るかどうかは私の勝手でしょ? 」

「心配されるのが、気を遣われるのが嫌なんだって、言ってるんですよ……! 美雪さんも、どうせ皆みたいに美沙は死んだって言うんでしょうっ! 」

園宮さんは、とうとう堪えきれずに泣き出した。園宮さんも、昨日は自分なりに存在していた禁忌の箱を開けていたのだ。そして、決壊した。

「園宮さん。私、今日は園宮さんを励ますとかそういうことをしに来た訳じゃなくて、ただ、私の話を聞いて欲しくてここに来たの。」

あえて園宮さんの痛みを無視する振りをして、私は話し始めた。父親からの暴行があったこと、誰にも頼れず人の顔を伺うようになったこと、誘拐をされたこと、今は水商売をしていること、それらの過去と今の話を、出来る限りまっさらにさらけ出して話した。園宮さんは、終始私の顔を見ずにミサを撫でていたが、時々耳が反応していたのを見るに、おそらく全て聞いていたのだろう。園宮さんがミサに話し掛ける時のように、私が園宮さんに話し掛ける時も、返答なんていらないのだ。

そして、私が全てを話し終えると、園宮さんはようやく口を開いた。

「……それで? その話を聞いて僕にどうしてくれって言うんですか? 同情でもすればいいんですか? 」

「いいえ、私はそんなことをして欲しくて話をした訳じゃないの。ただ、知ってもらいたかっただけ。」

「……あなたには、ちゃんと愛して育ててくれる幸恵さんも施設の人もいたじゃないですか! 」

「でも園宮さんにもミサが居るっ! 」

私は、いつになく大きな声を出した。

「私だって……両親がいないのは本当に辛かった。でも、園宮さんが言った通り、幸恵さん達が居てくれたおかげで私は、幸恵さんをお母さんだと思って、孤児院を家だと思って、私は、ここまで生きてこられたの。園宮さんがミサを頼りにして生きているのも、それと同じ! たとえ誰に何を言われたって、美沙さんを、ミサを信じられる園宮さんは素敵なの! 」

私も、気が付けば涙が溢れ出ていた。この言葉は、園宮さんに向けていると同時に、親が居なくて泣いていた過去の私への言葉でもあった。

「僕は……僕は……」

「園宮さん。」

私は、布団で座っている園宮さんの目の前に近付いた。そして、何も言わず、キスをした。強く、そして優しく。その一瞬は、まるで永遠に続いているような感覚だった。私の感情を、余すことなく全て注ぎ込んで、その口付けを離さなかった。

「ミサを、信じてあげて。それでも耐えられなくなった時は、私にも頼って。私は、絶対に園宮さんの味方だから。」

園宮さんは、再び泣き出した。私が居ることも気にせず、ただ感情のままに、泣いていた。

遠くで、過去の私が手を振って去っていくように感じた。



ここに引っ越してから半年が経つ。暑い夏も過ぎて、また引っ越してきた時と同じように過ごしやすい気温になった。あの頃から比べれば、ここでの生活にも慣れてきたように感じる。どんなこともいずれは慣れていくのだなぁ、と感じた。

それでも、変化は往々にして訪れる。

チャイムの音が鳴って、私はドアを開ける。

「おはよう、美雪。」

「おっ、スーツ似合ってるじゃん。どうしたの? もう社会復帰するの? 」

「いやぁ、恥ずかしい話だけど、それはまだちょっと早いかな。」

「はは、そっか。じゃあ何でそんなにキッチリした服着てるのよ? 」

「あぁ。今日、美沙の……め、命日なんだ。」

命日。今、はじめて園宮さんの口から命日、という言葉が出た。そして、その服装。園宮さんは、一歩踏み出したのだ。

「そっかぁ。行ってらっしゃい」

飛び切りの、化粧いらずの心からの笑顔だった。

「うん。行ってきます」

園宮さんの顔にも、飾らない、そのままの笑顔が浮かんだ。その日の園宮さんの後ろ姿は、やけに頼もしく見えた。


変わっていくのだ。私も、園宮さんも少しずつ。

園宮さんを見送った後で部屋に戻ろうとすると、そこにはミサが居た。

「ははっ、お前は今日も可愛いなぁ。」

頭を撫でると、いつもと全く変わらない甘えるような鳴き声で返事をして擦り寄ってきた。まったく、憎めない奴だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傷跡と野良猫 ほかほかおにぎり @onigirityan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る