第23話 良き隣人

「大川教授!

私は牧師家庭に生まれ

中学3年生までは

ずっと教会の中にある牧師館に住んでいました。」


「ほぉ!

牧師家庭とは珍しいね?」


「ええ」


「一般家庭と何か

違いでもあるのかい?」


「そうですね・・

聖書に触れる機会が多い!

という事ですかね!


子供の頃に聞いた

日曜学校の先生の話が

ずっと心に残っていて

私の人生に大きな影響を与えてくれています!」


「今回、君が堂本氏を

助けたことにも

何か関係していると?」


「そうですね・・

聖書の物語の中に

同じような状況の話が描かれているのです!」


「どのような話だい?

私も友人の結婚式で何度か

牧師さんの話を聞いて

感銘を受けたことがあるよ!


聖書は、人類に最も影響力を与えてきた書物だと言われているが

決して大げさではなく

素晴らしい書物だと思っている!

私自身クリスチャンではないが

聖書66巻すべてを通読した事があるよ!」


「大川教授もですか?

私もあります!

私は毎朝、学校に行く前に

聖書を読む習慣があって

日々の生活に大きな

力を与えてくれているのです!

とても不思議ですね・・」


「君はとても信心深い人なのだね?」


「いえ・・そのような事は

でも今回、堂本さんと

聖書の登場人物が不思議と重なったのです!

だから・・・」


「彼を助けてくれたのだね?」


「ええ!

良きサマリヤ人の話

有名ですよね!」


「ああ!!

とても感銘を受ける内容だ!」


「ある人が、強盗に襲われて

その人の着物をはぎ取り、なぐりつけ

半殺しにして逃げて行ったそうです!


息絶え絶えの状態の中

当時の社会で権威ある人たちが

面倒に関わり合いたくなく

見て見ぬふりをしたそうです・・」


「実際日本でもそういう人が

多いだろうね・・」


「仲の良い関係であれば、

支え合う事は容易だろうが・・

仲の悪い者同士だったら

なかなか難しい事だと思います


ましてや堂本さんのように

路上生活者であったら

まるで存在しないかのように

人間ではない扱いを・・」


「しかし聖書の世界では

予想を反する世界観があるのだね?」


「そうです!

当時の社会では

仲たがいしている筈のサマリヤ人が

強盗に襲われたユダヤ人の彼を

かわいそうだと思い介抱してあげたのです!


しかも宿屋まで連れていき

費用を払い、もっと費用がかかったら

帰りに払う!と言ったのですよ!

凄い事だと思いませんか?


可哀そうだと思う人は

世の中には幾らでもいるでしょう!

しかしさらに先の行動を移す!

そう思う事だけでも

大事な事だと思うのです!


『強盗に襲われた者の

隣人になったのは誰か?』

このメッセージは現代を生きる

私たちにも語られている事だと思います!


それにこれは・・もしかしたら

人にはできない事を

させてくださる存在が

おられるという事なのかもしれません」


「佐竹和美さんと言ったね?

君は若いのに

素晴らしい人生観があるね!


さぁ!

君が助けようとした隣人の

治療が終ったようだよ!

彼に話をしに行こうか?


きっと喜んでくれると思うよ!」


「はい!」

大川教授と佐竹和美は

堂本賢司氏の元へ向かった!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る