第22話 堂本氏の治療

「あなたはどなたですか?」

保健師の中谷先生が尋ねると・・


「ただの通りすがりの老人に過ぎないが

あんたと同じく教育者の端くれだよ・・


それより先ほどから

お嬢ちゃんの様子を

近くで見させてもらっていたのだが

必死に駆け回っている様子に

とても感動していたよ!


お嬢ちゃんを安心させる為に

最初に言っておくが

あのご老人は私と旧知の仲でな!

訳あって、あのような姿をしているが

決して世間から見放されるような人物ではない


本人は救急搬送を拒否していたようだが

私の教え子が近くの救急病院でDrをしていてね!

さっき電話をかけて

往診に来てくれるように頼んでおいたよ!

だからもう心配はいらないよ!」


「そうですか?

それなら良かったです!

安心しました!」


「それよりさっきの

お前さん達の話が聞こえてきてなぁ

具合悪くしている人が見たら

手を差し伸べるのが

人としてなすべき事ではないかな?

たとえ修学旅行で集団行動の輪を乱す事があったとしても

人の命は尊いものだよ!


それを教えるのが教育者としての

務めではないかね!

もしスケジュールに支障が出たとしても

別行動をとる方法なら

幾らでも考えられるだろ!」


「・・・・・

失礼ながら

あなたも教育者とおっしゃっていましたが

どなたなのですか?」


「わしか!

わしは日本新大学の大川だ!

名前くらい聞いた事があるだろう!」


「えっ!?

あの有名な大川名誉教授ですか?

大変失礼致しました!


私あなたの著書10冊以上持っていて

大変尊敬しております!」


中谷先生はタジタジとしていた


「先生!

少しこのお嬢ちゃんと

話がしたいのだが時間貰えるかな?」


「勿論です!」


大川教授の勧めで

教授と佐竹和美はベンチに座った

すると先ほど大川教授が言っていた通り

近くの総合病院から救急車両が到着た

堂本氏の治療を行う為に

2名のDrと3名の看護師が対応していた


「凄いですね!

先ほど私が頼みに行ったときは

門前払いだったのに・・どうして?

大川教授は凄い方なのですね!」


「いや・・」

(わしが凄いのではない・・・

堂本氏の為なら

東京都内の全ての病院が

堂本氏を助ける為に駆け付けた事だろうよ・・)


「少し話をしようか?

お嬢ちゃんは何歳だい?」


「17歳の高校3年生です!」


「今回どうして

あのご老人を助けようと思ったのだ?」


「特別な理由はありません

目の前に人が倒れていて

困っている姿を見かけたので

放っておけない!

ただそれだけです

それに・・・」


「それに?」


「話が長くなりますが

大川教授お時間ありますか?」


「勿論だよ!

それに堂本さんの治療が終わるのに

あと30分はかかるだろうし

君も気になるだろから

一緒に安否を確認しようではないか?

どうだい?」


「ありがとうございます!

是非お願いします!」


「私の生い立ちからになりますが

聞いて頂けますか?」


「聞きかせてくれ!」

大川教授は

佐竹和美に優しく微笑んだ

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