第21話 10年前の出会い

佐竹和美と

日本新大学の大川名誉教授

そして「未来型サービス」創立者

堂本賢司氏との出会いは

とても衝撃的であった!


佐竹が高校3年生の時

修学旅行で東京観光に

訪れた時の出来事である


佐竹は友人達と昼休憩に

立ち寄った神田橋公園で

路上生活者の人々に遭遇した


佐竹の友人達は

彼らを避け、近寄ろうとしなかったが

佐竹は、彼らが叫んでいる声が気になり

側まで近づいていった


「堂本さん!

大丈夫かい?」

路上生活者の仲間数人が

心配そうに囲んでいた


「ああ・・・

腹が急に痛くなってしまって・・

痛っ!!」

老人はとても苦しんでいるようだった


「おじいさん

どうしたのですか?

お具合悪そうですね・・・大丈夫ですか?」


「ああ大丈夫だ・・

さっき食べたおにぎりが

少し古かったのかもしれないなぁ・・ハハハ

情けない事だ・・」


「おじいさん!

お腹痛い時は 

お水をしっかり飲んで

悪いものを出した方が良いですよ!


私お水持っているから

良かったら飲んで下さい!」


佐竹はカバンから

未開封の水を取り出すと

堂本氏に手渡した


「君の分がなくなるのでは?

気持ちだけで十分だよ・・

ありがとう・・」


「痛ったたた・・」

堂本氏の腹痛はかなり酷く

顔を歪めて苦しんでいた


「おじいさん

どの辺りが痛むの?」


佐竹は堂本氏に近づくと

痛がる部位を

摩ろうとした


「お嬢ちゃん

ワシはしばらく風呂に入っていないから

匂うし触ると汚いよ!」


「何を言っているのですか?

そんな事関係ありません!!


それより早く病院に

行った方が良いのでは?

救急車を呼びましょうか?」


「いや・・・いいよ

金がないしなぁ・・

それにこの痛みは

しばらく経てば

収まるから大丈夫だ・・」


しかし佐竹は

じっとしておれず

急ぎ近くの病院まで

声をかけに行ったが

救急車を呼ぶように言われてしまった


「どうしたら良いだろう・・・」

佐竹はしばらく考え込んだ


「そうだ!

学校の保健師の先生に

相談してみよう!」


「先生!

神田橋公園で

具合が悪くて

苦しんでいる人がいるのです!

助けてもらえませんか?」


「佐竹さん!

その方は路上生活者の人では?

同級生の山田さんから

あなたが接触している事を聞きました

でもあなたは今

修学旅行の最中なのですよ!


たとえ人を助ける為であったとしても

集団行動の輪を乱す行為をしたら

みんなに迷惑をかける事になると思いませんか?


それに路上生活者の方は

事情があって今の生活を

自ら選択したのだから

放っておいていいのよ!」


「そんな・・・

路上生活者の人には

救いの手を差し伸べる方法はないのですか?」


「ないわ!!」


「本当にそうだろうか?」

佐竹と保健師の先生のやり取りを聞いていた

老紳士が話しかけてきた

大川教授であった

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