第10話 亡き母の旧友


佐竹は 阿部さんが体験利用している

丸亀デイに到着すると 

阿部さんの姿を 目で追った


「阿部さんは どこにいるだろう?」

佐竹は 丸亀デイに向かう道中、脳裏に

阿部さんが緊張し、表情を硬直させ 

居場所が見当たらず すぐに家に帰りたい!と

駄々をこねている姿を 想像していた


しかし実際のデイルームの中は

騒ぎが起こっている様子はなく

とても穏やかな雰囲気が漂っており

平和そのものであった


佐竹は、阿部さんの姿を目で追った

すると何と!デイルームの中央に設置されている

8人掛けのテーブルの一角に

阿部さんが加わっており

何と!幸さんという90過ぎのおばあちゃんの横に座り

二人は談笑していたのである!


佐竹は、とても驚くが・・・

阿部さんの笑顔を見て・・

張り詰めた緊張が少し和らぐ

自身の心の動きを感じていた


後ほど、阿部さんから話を聞き

分かった事は、幸さんというご利用者さんは 

阿部さんの亡き母親の親友であり

阿部さん自身 面識があったのである!


デイサービスの送迎者の車中で

阿部さんと幸さんは、お互いに挨拶をし

二人の距離がぐっと近づいたようなのである!


二人はまるで本当の親子のように

親しげに笑顔で談笑していたので


佐竹は 涙が出るほど 嬉しくあった


「阿部さん!」

佐竹は、阿部さんのテーブルに近寄り

阿部さんと幸さんに挨拶をした


「阿部さん 相談室をお借りして

今後の相談をさせて頂きたいのですが

宜しいですか?」


「勿論です!」


佐竹は、阿部さんの車いすを押し

別室の相談室に向かった

デイサービスの職員が

佐竹と阿部さんに冷たいお茶を持ってきてくれ

施設の質の高さが見てとれた


「阿部さん 

奥様から連絡が入っていると思いますが

奥様は手首を骨折され

しかもコロナ感染症の濃厚接触者であり

しばらく療養と隔離が必要であり、

いずれ家に戻れても

しばらく介護は困難かと思われます。


私は阿部さんには

是非、ショートステイの利用をお勧めしたいですが

まず阿部さんのお気持ちを聞かせて頂けますか?」



「私は、妻の事がとても心配です・・

骨折の様子はどうでしたか?

コロナ感染症の濃厚接触者とのことですが

感染している可能性は高いでしょうか?」


「奥様の骨折が完治するまでは

2か月以上はかかると思います

コロナ感染症については 

しばらく予断を許さない状況ですが

感染している!と確定した訳ではありませんので

心配ではありますが・・しばらくホテルで

療養して頂き、保健所と霞が関総合病院が

しっかりフォローして頂けるので、ご安心ください!」


「そうですか・・少し安堵しました。

佐竹さん!わたしの事ですが・・

ショートステイや入院は絶対に嫌です!

でも今回、お世話になっている丸亀デイは

とても気に入りました!

私の母の旧友である幸さんとの出会いが

一番の理由です!

もし幸さんに出会わなければ

利用には繋がらなかったと思います・・


また所長さんも良い方であり、信頼がおけます!

看護師さんも、とても親切に対応してくださり

丸亀デイであれば、妻が不在の間

また妻の介護負担軽減の為に

継続して利用しても良い!と思っています。


ただ家には帰りたい!

ヘルパーさんには頻度多く、関わって貰わなければならず

私の介護度で、どれだけのヘルパー利用が可能なのか?

分かりませんが・・教えて貰えますか?」


「分かりました!

デイサービスのご利用を

ご決断頂いただけでも 私はとても嬉しいです!

本当に良かったです!」


では早速ですが

今後の方針について

ご提案したい内容があります!」


「是非、聞かせてください!」

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