純粋な子供

緋彗 皇

「赤く光ってるよ、おにいさん。」

 特殊能力

 

 

 

 僕には特別な力があった。

 

 あれは確か小学校三、いや四年生の頃、だったかな。僕の友達が隣のクラスの女の子が好き、なんて噂が流れたんだよ。そのくらいの年になるとよくあるませた話だよね。もちろんみんな興味津々に男の子の方に聞きに行ったよ。「本当に?」ってさ。でもやっぱりそういうお年頃だからかな、その子“はあ?!そんな訳ないじゃんあんな奴誰が?!”なんて言っちゃったんだよね。その時だよ。目の前で赤いなにかがチカチカ光ってたのはさ。最初は僕もなにが起きたか分からなくてね、友達に聞いたけど誰もなにも見てないって言うんだよ。可笑しいと思わない?それからは事あるごとにチカチカ光ってるんだ、赤いなにかがさ。


最初は気がつかなかったけど、数日もすれば流石に当時小学生だった僕でも分かったんだ。あれは、あの光は誰かが嘘をついた時に光るんだって。そう分かった時の快感ったらないね。自分に与えられた使命だって、ただただ自分が人より上に立てたような気がして、ずっと上機嫌だったよ。


まあ、なにもいい事ばっかりじゃなくて、知られたくない事もあるし、後片付けもすっごく大変だしね。

 


あの時?ああそうだったね。あの時は、いつもみたいに夜中帰り道を歩いてる時だったよ。知ってるとは思うけど、いつもあの時間にあの道を歩いて帰っていたからね。それから、二つ先の街灯の下に誰か居てさ、僕視力はあんまり良くないから、とりあえず近くまで見に行ったんだ。どうしてって、そう、そうだった。何故かチカチカ光ってたんだよ、赤くね。流石にびっくりしちゃった。何か嘘でも付いたのかな?と思ってさ。それで気になっちゃって近くに行って顔を覗いたんだ。そしたらもっとびっくりしちゃったよ。

 

「血塗れになった自分が倒れてたんだからさ。」

 

 話が終わると男は、そうか。大変だったんだな。と言って先程まで青年の話す内容を書いていた手帳を興味無さげに閉じた。厨二な病でも患っているんじゃないかと、そんな物腰柔らかそうな青年が話したとは思えないなんとも突飛な話だった。オカルト系か何かか、と思うと頭が痛い。男は全くそういった類いのものは信じないタチだった。とにかく、と立ち上がると男は今の話を調書にどう纏めようかともう既に痛い頭を抑えた。そしてマニュアル通り青年には協力感謝の意を伝え、他の奴らに送り出させる。


「──、────。」

 

 帰り際、青年が何か言っているのがわかったが、自分に向けたものではないと判断した男は面倒な調書対して憂鬱な気分に浸った。

 

 

 

 今日未明、千代田区マンション付近で三十代男性の遺体が発見されました。身元を確認すると警察官である事が判明。周囲に凶器などは見当たらず、大量の血液が検出された事から失血死である可能性が高く、警察は────。


 

 

「嘘は駄目だよ???」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

純粋な子供 緋彗 皇 @kouhisui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ