第6話 人生別離足る
ふと、目を覚ました。
そこは屋上でも、大戸の膝の上でもなく、俺の部屋だった。そして、俺は全て理解した。
今までのは全て夢だったのだ。八時に起きて成人式に向かったことも、そこで街の変わりようや友人たちとの差に絶望したことも、死んだ大戸が現れたことも、暗い雪の中で沢山語り合ったことも、唇を重ねたことも、あの子守歌も。その全てが、夢だったのだ。
「はは、ははは…」
俺は自嘲気味に笑った。もう、笑うしか無かった。良い夢だった。希望を抱かせてくれる、素晴らしい夢だった。だが──────
「こんな悪夢ってありかよ……」
とにかく、心が苦しかった。
膝を抱えて涙を流す俺の前には、小さなカランコエの花が凛と咲いていた。
雪日幽歌 @axel04
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